第2話支援職は覚醒していた。
俺は戦闘奴隷で符術士のレオ。この世界では誰でも才能が神より与えられる。だが、その才能が人の人生を一変させる。6歳の時に全ての国民が才能の鑑定を受ける。
そして将来が決まる。優秀な才能をもらった者は将来が約束され、そしてハズレスキルには……未来がない。
俺の才能『符術士』はハズレスキルだった。
俺は両親にすぐに奴隷として売られた。たいていのハズレスキルは奴隷として売られる。全体の1割がハズレスキルだ。昨日まであんなに優しくしてくれていた両親が俺を蔑んだ目で見て乱暴に奴隷商に連れて行って売り飛ばされたことは子供が故大きなトラウマになった。
俺の才能は符術士、魔法職のハズレスキルの典型だ。何故なら符術は古代語で符と呼ぶ紙に呪文をしたためる必要がるが、古代語は現在解読不能で発展が難しい上、初級までしか伝えられていない。古代には中級以上の符術も存在したと言われているが定かではない。通常の魔法職は上級まで習得可能だ。王宮魔導士に至ってはその上の神級魔法すら。
だが、俺は才能と共に与えられるスキル符術の他にランダムで当たるエクストラスキル『収納(小)』と『翻訳(小)』があったので比較的ましだった。
符術士はアタッカーではなく支援職だ。それに収納や翻訳などのスキルがあるとかなり便利な支援職になる。
☆☆☆
ドンッという音と共に奴隷商の牢獄に落ちた俺は今日の出来事を思い出していた。みんなにとっては1日の出来事、だが俺は100日近い時間をあの世界図書館で過ごしていた。
全ては勇者アーサーを助けるために庇い、逆に捨て駒にされたおかげで偶然見つけた世界図書館。そう、あれは今日のダンジョン攻略でのことだった。
「勇者様、流石にこれ以上先は危険ではないですか?」
「何を臆してる? まだまだやれる」
「しかし、もう符の数が残り少なくて」
「泣き言を言うな。それにお前の符などなくても大して影響はない」
俺は不安を胸に勇者の言葉に従うよりなかった。
だが、俺の不安は的中した。
「勇者様、ロイヤルアルラウネです!」
最悪だ。俺達はエリートオークを狩って素材を手に入れて一攫千金を狙っていた。だが現れたのはCクラスのエリートオークではなく、Aクラスの植物に擬態する魔物ロイヤルアルラウネ。
ダンジョンでは稀に普段より強力な魔物が生まれることがある。それがオーバーランク、俺達で勝てる相手じゃない。
前衛で戦う剣聖エミリアと魔法剣士シエナのふいをついて、勇者に襲い掛かる魔物の蔦。勇者アーサーは突然のことに驚いて一撃を受けきれないで、剣を飛ばされてしまう。
「し、しまった!?」
「俺がカバーします!」
俺は勇者様の援護に回って、勇者の前に出て、攻撃型の符術を唱える。
だが、魔物の蔦は俺の攻撃を避けて俺に激しい攻撃を繰り出す。
「レオ、俺が逃げ切れるまでそいつの相手をしていろ!」
「え!?」
俺は衝撃を受けた。俺がおとりになって、その隙にみんなで攻撃する。そうすれば敵の隙を見つけて全員逃げることも可能だ。勇者はそう考えてくれる筈と……その筈だと思っていた、だが。
「撤退だ。そいつを見捨てて、撤退するぞ!!」
「そ、そんな!!」
俺は激しい蔦の攻撃を避けながら、味方の姿を探した。
勇者アーサー達が一目散にこの階層から撤退していくのが見えた。いや、逃げたのだ。
唯一、魔法剣士のシエナが口惜しそうに一番最後で俺の方を見ていた。
頭を鈍器で殴られたような気がした。
「……そ、そんな」
気が付くと俺はアルラウネの蔦に絡めとられていた。この魔物は食虫植物と同じだ。少しずつ人間の汁を吸い、ミイラになるまで栄養分を吸い上げる。このままじゃ。
蔦が俺の身体を締め上げる。俺の右手から鮮血が滴り落ちる。
そして魔物の本体の大きな口が開いた。あの中に入ったら、ものの1時間で溶かされてこいつの栄養になる。
「ち、チクショウ」
魔物の口が迫る、まさにその時!
ザクッ!
魔物の口の中に短剣が刺さる。援軍か? だが、俺は重大なことに気が付いた。アルラウネは魔物、そのどこかに魔石がある。それを壊せば勝てる。そして、大口を開けているアルラウネの大きな口の奥に赤く光る魔石が見えた。
「符術、煉獄!」
俺はなけなしの符術を魔物の口の奥に至近距離から放った。
アルラウネは悲鳴をあげた。そしてのたうち回りながら、苦しそうに絶叫する。
「この野郎! くたばれ!」
俺は更にアルラウネの口の中に符術を更に叩きこんだ。
『ギィヤァァァァァァァ……ッ!』
断末魔の叫びだ。無数の触手は全て力を失い地面に落ちる。そしてそれっきりアルラウネが動く事は無かった。
「……殺った、のか?」
逃げきゃ。こんなダンジョンの深層で仲間がなく、一人で生き残るなんて……不可能だ。
そして、そんな時にまたしても違うアルラウネの個体に遭遇してしまった。
絶対絶命、逃げるしかない。だが、逃げ切れるか? もう、攻撃型の符術は残っていない。
迫りくる魔物に俺は袋小路に追い詰められたいた。だが、その時、退路を塞ぐ壁に古代文字で書かれた文字が目に入った。
『世界図書館入口』
なんだこれ?
『ここに入りたければ右下の赤い石を押せ』
俺は一縷の望みをかけてその赤い石を押した。すると壁の中に吸い込まれて行った。
そこは異世界図書館だった。魔物は入ってこれないようだ。
こうして俺は九死に一生を得た。そして、俺はこの世界図書館で様々な古代の失われた魔法や知識を手に入れることが出来た。
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