エマという音楽
珠愛
外を眺める彼女
隣を見るとまた彼女が外を眺めてこう言った
「もし、私があの子の様に走れたらなあ」
静かな風すら彼女を裏切るように、病室に入ってくる。
「ピアノを弾いてるだけで十分だと思わない?こんなに楽しいのに」
僕は彼女が外で遊びたがってるのが理解できない。
彼なんて怪我ばかりして、泥だらけになりながら母さんに叱られて、
そんなのがなんで楽しいんだろう。
「アミンはきっとピアノが上手いからね、私はいつもおばさんに怒られるわ。エマ、しっかりしなさい!って。ピアノが嫌いになりそうな程今はうんざりしてる」
きっと彼女はピアノを嫌いになるんじゃなくておばさんが嫌いなんだろう。そして横で自由に弾いてる僕を心底羨ましがってる。でも、彼女がピアノを嫌いになってしまったら、僕が今作ってる音楽も聞いてもらえないのだろうか。
「エマも、おばさんから指導を受けるのを辞めたら?」
彼女はため息をついて言った
「ピアノがちゃんと弾けなくてどうやって自由に演奏するのよ、あなたのように心地よく演奏したいから今頑張ってる最中よ。でも、私って頑固よね、こうやって指導を受けると突然やりたくなくなる」
その気持ちは僕も心底わかる。だって僕も早く自由に音を奏たくて指導を頑張った。
でも、僕は彼女のようにやりたくないとは思わなかった。
もしかしたら彼女はピアノを弾くよりも、外で遊びたいのかもしれない。
「ねえ、アミン。私たちは生まれ変わる前にどういう人になりたいか決めて生まれてくるらしいわ。なんで私たちは病気持ちの人生で生まれてきたのかしら」
彼女はまた外を眺めながらそう言った。
「僕は、病気持ちのおかげで兵隊に行かなくても済むし大好きなピアノもずっとできる。」
彼女はなるほどね〜と頷いてくれた。
実は、こういうとみんなには男として情けないとか愛国心がないだの言われる。
だけど彼女だけは、僕のことを理解してくれる。
「私は、いつかあなたみたいな理由が見つかることを願うわ。」
それが、僕にとってはすごく良かった。
僕を唯一理解してくれるのが、ただ彼女だけだということが。
エマという音楽 珠愛 @Kotony04
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