第2話 <後編>



私は田中君が女の子と歩いているのを目撃したあと、涼子と近くのカフェに来て、田中君について話していた。


「えっ、好きだったんだ。知らなかった。」

「あたしも最初は苦手だったの、変な人だし」

「分かりやすい同族嫌悪」


「あの人曇りの日にね…」

私は徐にこの前の彼とのエピソードを話し始めた。









「曇りの日は全部日向です。見てっ!ここ。影ある?」


私はそういって地面を指さす。


「はい?曇ってるんだから日陰でしょ。」


そういう彼に呆然としていると、


「見てっ!空。」


彼はそういって空を指さす。


「日が陰ってるでしょ?」


「・・・そっちですか。晴れた日のコンビニの傘立てに一本だけ刺さったままのビニール傘に何の情緒も感じない人ですか。」

「何、その安そうな情緒。」


彼はそういってまた歩き始める。













「それで…」

「えっ、それで!?

今、好きになった時のエピソード話してたの?

嫌いになった話じゃなくて?」


涼子は長い溜息を一つつくと、いきなり立ち上がり


「ちょっと顔貸して?行くよ!」


そうして私をトイレに連れて行った。






涼子は私の眼鏡を外し、


「せっかくかわいい顔なんだから、可愛いで無双しないと!」


そう言いながら、私をメイクしていく。


「はい、できた。かわいい。」


鏡で見てみると、とても私とは思えないほど綺麗だった。


「すごい。」

「これで会ってきなよ。さっき一緒にいた女が彼女でも関係ない!横恋慕上等だ!」

「でも…」

「あ、もう。「よっ!」とか言って、ご飯に誘えばいいんだよ」

「とりあえず、メガネは掛けていく」


私はそういって、彼の元へ向かった。












「よっ!昨日はありがとうございました」


私は涼子に言われた通り座っていた田中君に声をかける。


「よっ?」


いきなりのことで彼も驚いていた。

私は彼の目の前に座り、尋ねる。


「ご飯どうでしたか?」

「あぁ,,,なんか、いい人だった。仲良くは…どうだろう。」

「なれそう、成りたい、なったで言ったら?」

「何その活用」


彼は笑いながらそう言った。


「ん?」


彼は私の顔をじっと眺め、何かに気付いたような声を上げる。

そして、私の眼鏡をいきなり外す。


「なんかさ、メガネのグラスになんか書いてない?」


そこには、私が彼に会う前に書いた

『ご飯いいね』

の文字が書かれていた。


「サブリミナル効果で確率を…」


少し恥ずかしがりながら、言い訳をする。


「ご飯いく確率を上げようとしてんの?」


彼は笑いながら私の眼鏡を見ている。

私は勇気を振り絞り、



「仲良くなりたいご飯の…」



以前のカフェを出てからのやり取りがフラッシュバックする。

彼は少し驚いた顔をしたが、それは柔らかい笑顔に変わった。


「ご飯いこうよ」


彼がそういうと、私も笑顔で答えた。


「いいですね」

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大学で出会った男の子に惚れてしまった内気な私は告白の仕方が分からない みっちゃん @nanashi689

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