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【TAHOOニュース:女子校で集団パニック発生か】


 20XX年12月。S県立F女子商業高校において集団パニックが発生か——。


 死亡者29名(生徒28名、担任教師1名)。前代未聞の集団パニックが世界中から注目されている。


 事の発端は十二月初旬。F女子商業高校バスケ部女子生徒が友人と帰宅中、歩道橋から発狂乱になり飛び降り自殺をした事だった。その数日後、それを目撃した友人が自宅で首を括り自殺。その後、同じクラスのバスケ部女子生徒がトラックの前に飛び出し事故死。また、その数日後にも同じ学校の生徒が電車に飛び込み自殺するなどと、相次ぐ友人の死が引き金になった。集団パニックは二十八名の生徒と担任教師を死に追いやった。現在、外部からのマインドコントロールなどの可能性も視野に入れ、警察、教育委委員会、子供の精神ケアサポートセンターなどが調査中。


 集団パニックは国内でも多数事例があり、バス車内で怪談話をしていた高校生複数人が過呼吸になり病院に搬送されたケースや、ショッピングモールで女子中学生の集団が次々倒れたケースなどがある。


 いずれも集団パニックの引き金となるきっかけは様々だが、女性が陥りやすいという統計データが出ている。ただ、集団パニックに詳しい精神科医師はこう語る。


『集団パニックはある特定のグループ内で不安や緊張が伝染し、過呼吸や腹痛を訴えるなどの事例が多いですが、今回のこのF女子商業高校の場合は、死に至っています。

 相次ぐ友人の死が引き金で、彼女たちが自ら死を選んだとすれば世界的にみても稀なケースと言えるでしょう。もちろん、宗教がらみで集団自殺をしたケースは海外にもあります。有名な例ではアメリカの宗教団体ヘヴンズ・ゲートなどが挙げられるでしょう。しかしそれは、同じ時間に一箇所に集まり自殺をはかったというもので、今回の集団パニックとは別物です。

 今回死亡した彼女たちは、同じクラスのクラスメイトと担任の先生。そのほとんどは事故死や自殺ですが、果たしてこれが本当に集団パニックなのかどうか。

 唯一生き残ったのが、いじめが原因で不登校になっていた女子生徒というのが、また皮肉なものです。引き籠りの不登校児だけが影響を受けなかったのは、学校や友達に対して日頃の繋がりがなかったからでしょう。

 なんにせよ、子供の心の問題にもっと大人が注視して寄り添っていくことが大切だと、私は考えます』(ようこメンタルクリニック院長:山科洋子医師)


 相次ぐクラスメイトの死。そのショックや、次は自分かもしれないという不安や恐怖が彼女たちを襲ったのだろうか。関係機関が現在調査中である。





 




 

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