08 想い・刻をこえて

 しま博士は、自らの存在自体を「魔力」どころか「魔法」すなわち因果律そのものへと転換。世の因果係数が書き換わることにより、つまりは偶然の発生率を極限にまで必然寄りへと高めて、本物のを守り切り、二つの美夜子の融合を果たさせたのだ。

 つまりこの状況には、一切の偶然要素はなかったのである。

 あっても誤差以下、微塵の程度。

 間一髪で美夜子オリジナル体やなえが助かったことも含めて、これは五百年も前からの小取美夜子が父、いや父であったモノの導きによる、それは必然だったのである。


 砕いた中に標的がおらず、目的を失った白銀の機体は自暴自棄にでもなったか、それともただ次の標的を定めただけのことか、ガチャリ方向転換、床を蹴って赤いめかまじょへと踊り掛かる。


 赤いめかまじょ、美夜子は冷静に半歩動いてかわしていた。


「ロケットパアアンチ!」


 かわしざま発射された左腕。


 胴体に受けて、白銀の機体はととっとよろけて床に倒れた。


「お父さん……」


 戻ってくる左腕を着けながら、美夜子は小さく唇を動かした。


 博士……お父さんが、自分の存在を犠牲にしてまで、わたしに戦う力をくれた。

 わたしに、守る力をくれた。

 それは現在のことだけではなく、ここまでのずっと。

 ずっと。

 五百年も前から、ずっと見守ってくれていたんだ。



 見守っていたというのみならず、その父の壮絶な愛というべき力で二つの魂は融合し、いまここに新しい小取美夜子が誕生したのである。

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