05 まんざらでもない

 仮面で顔を隠した白銀の女性型機体、その身が青いロケットパンチを胸に受けてぐらりとよろける。


 はレベルフォーの反動に半ば意識朦朧としながらも、不意に訪れたこの好機を逃さなかった。


「ブーメランレッグ!」


 腰を捻って回し蹴り、と見えた瞬間に股間から右足全体が外れて飛んだ。

 膝が曲がって言葉通りのブーメラン的な形状になって、白銀の機体へと至近距離からまず一撃。直撃ではなく脇腹を掠めた感じであるが、それは狙いで、くるくる戻って背後から二撃目どっかん。


 仮面で素顔を隠した白銀の女性型機体、彼女には別段大きな損傷を受けた様子は見られない。

 だが、死にものぐるいに魔道ジェネレーターの出力を上げた赤いめかまじょと、救援に現れた青いめかまじょ、その二人を相手にするのは少々不利。そんな判断をしたか否かは彼女のみ知るだが、不意に踵を返して廊下を走り出すと、あっという間に灯りの届かない闇の中へと消えてしまった。


 残るは静寂。

 いやその静寂もすぐ美夜子の叫び声に打ち消された。


「早苗ちゃん! 無事でよかったああああ!」


 レベルフォーを解除した美夜子が、現れた青いめかまじょへと抱き着いたのである。

 まだまだ吐き気が酷くて目が回るけど、そんなことより仲間の無事が嬉しくて。

 青いめかまじょ、みやもとなえへと。


「や、やめろや小取! この姿やと金属ガチャガチャぶつかるやろ! うっとおしいねん! そ、それにえらい機体からだが熱いなあ! 離れろやボケえ!」


 身悶えして、逃げようとする早苗。

 であるが、でも心配されて泣きそうな美夜子にぎゅうっと抱きしめられていることに、まんざらでもなさそうな表情であった。

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