04 それは一体なんのために?
変身こそしたものの、それは相手も同じこと。
基本性能に開きがあるということなのか、やはり劣勢なのは
先ほど住宅街で戦った時は、美夜子は圧倒されながらもなんとか腕をもぎ取り形勢逆転して相手を追い詰めた。だが今度は、相手が油断なきよう戒めて挑んできているのか、機体の抜本的な修正を施されたのか、ともかく隙を見つけることが容易でないどころかまるで出来なかった。
でも……修正を施す、ってそれは誰が?
腕を修理して再び送り込んで、ってそれは誰が?
なんのために?
わたしを狙って?
それとも今回は最初からここが目的で、たまたまわたしたちがここへ来たから攻撃した?
でも、それは何故?
ここは、わたしのお父さんの家ではないのか?
わたしは、何故こうして襲われている?
考えてどうなるものでもない。
劣勢時には、なおさら余計な思考だ。
だけど美夜子は、劣勢だからこそ考えてしまっていた。
がんがんがんと連続で打ち込まれる鋭く重たい拳を、必死に防ぎながら。
「ぐっ」
ままならなさに美夜子は呻く。
そして胸の中に苛立ちの言葉を吐く。
戦いに集中しなきゃいけないのは分かってるけど、でも、考えるなといわれても無理だよ!
だって、だって、目の前にいるのは……
わたしを攻撃して、わたしを破壊しようとしているのは……
お父さんの作った、めかまじょなのかも知れないのだから。
劣勢であるからこそそんなことを考えてしまい、考えるほどに目的意識を見失いそうになる。
「ミヤちゃん、が、が、頑張れええ!」
いわれなくても頑張ってるよ!
この相手、強いんだよ!
でも……
もしここでわたしになにかあったら、ノリマキくんまで道連れだ。
それに、わたしがここへ来た理由は早苗ちゃんを追ってだ。少なくとも無事を確認するまでは、負けるわけにはいかないんだ。
目の前にいるのが誰であろうと。
強敵であろうと。
もしも本当に、お父さんの作っためかまじょであるとしても!
「精霊マジック……レベル、フォー!」
美夜子の無骨な右腕の、縦に裂けている隙間がさらに空いて、さらに一回り太くなる。
ごんごんごんごん、魔道ジェネレーターの稼働音がより低く、そして回転音がやや速くなった。
足から重たい振動が伝わって、床がびりびり震えている。
「ミヤちゃん、レベルフォーは使っちゃ駄目だ!」
叫ぶ典牧青年であるが、もう遅い。
美夜子の姿が、ぶんと空気に溶け消えた。
と、見えた瞬間には、美夜子は白銀の機体のすぐ眼前。
胴体へと、重たい拳を叩き込んでいた。
形勢逆転?
とはならなかった。
最初の一発こそ浴びてしまった白銀の機体であるが、すぐに順応し、もう美夜子の攻撃はかすりもしなかったのである。
ただし、相手の攻撃も美夜子には当たらず。
いわゆる膠着状態であったが、総合的な分としては圧倒的に美夜子に悪いといえるかも知れない。
レベルフォーに耐えられず、
制御の根本は生身の脳であり、処理が追い付かず意識が朦朧となってきてもいた。
加えて、熱に脳が溶けそうだ。魔道ジェネレーターから生じる高熱を正常に冷却出来ず、全身が内側からぐつぐつ煮えたぎっているのだ。
バーストを迎えて活動停止するのは果たして何秒後か。
そんな見かけだけの膠着状態であったが、その絶望的な現状を打破して美夜子を救ったのは、よおく聞き知った女子の叫び声だった。
「ロケットパンチやあああああ!」
青い機械の腕がジェット噴射で白銀の胸へと叩き込まれていた。
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