03 三度目の戦闘
広い廊下の薄赤い灯りに照らされて、白銀の女性型機体が鈍く輝いている。
見た目と性能は必ずしも一致、比例するものではもちろんないのだろうが、それでもどこにあのような戦闘力があるのかと驚きを禁じえないスリムな体型である。
ブロンドの髪の毛。
顔立ちも、なんだか端正な外国人風だ。
もしも完全な機械なのであれば、西洋東洋と人種を判断することに意味などないわけだが。
先ほど夜の住宅街で、
その際に白銀の腕をもぎ取ったのであるが、その失った腕は既に修復されている。
さほど時間は経っていないというのに、外見上はどこにも手負いを感じない。
それとも、別の個体なのだろうか。
と、疑問に思う美夜子であるが、じっくり考えている暇はなかった。
不意に、床を蹴り身を低く飛び込んできたのである。
めかまじょに似た、白銀の機体が。
仮面で顔を隠したまま、残る口元を無表情のままに。
今日だけで三度目の、彼女との戦闘が始まった瞬間だった。
「くふっ」
いきなりの襲撃であるためまだ学校制服姿の美夜子は、腰を軽く落としながら両肘を曲げてひとまず防御を固める。だが、相手の破壊力が想像以上でガードの上から弾き飛ばされてしまう。
とと、とよろけ、転び床に尻もちをついた。
相変わらず、凄い力だ。
美夜子は心の中で舌打ちする。
三度目の対峙というのにまだ相手を読み切れていないのか、それとも短い間に調整が加えられているのだろうか。
制服スカートの乱れを直しながらも、美夜子はまずは気迫で負けるかと白銀の機体を睨む。
なお、描写の上で主に白銀の機体という表現を用いるのは、この相手が生身の人間かサイボーグかアンドロイドか、まだ不明だからである。
先の戦いでネジ切って解析した腕から、身体が機械であることは分かっており、少なくとも間違いはない表現として機体の二字を使っている。
「ミヤちゃんっ、だいじょうばはああああああ!」
仮面を着けた白銀の機体が、今度は青年を襲ったのである。
戦闘不能か殺傷か、なにを目的としているのかは分からないが、とにかく受けた方は無事では済みそうもない勢いで、金属の拳が風を切って典牧青年へと突き出された。
だが行動が結果に繋がるその前に、白銀の人型機体はガチリ音を立てて横へとよろめいた。
素早く立ち上がった美夜子が、制服のスカートを気にせず豪快な飛び蹴りを浴びせたのだ。
浴びせ、そして着地。いつの間にか彼女の右腕が、肩から手首まで真っ赤な金属の形状へと変化していた。
その機械の右腕を正面へ突き出すと、前腕の中ほどにある鍵穴に、左手に持つ鍵を差し込んでガチャリ、ひねった。
「精霊マジックレベルワン!」
ふぅぅああん!
アクセル全開豪快爆音が洋館の広い廊下に響くと、美夜子の右前腕がガシャリと縦に裂けて開き、隙間から眩しい光が漏れる。
ごんごんごんごん重低音。
ごんごんごんごんなにかが回って、漏れる光がミラーボールのように動いている。
「磁界制御! 力場制御! 魔道ジェネレーターブーストアップ! 内圧良好……変身!」
どどおんと爆発が起きて、爆炎が制服姿の美夜子を包み込む。
もうもうとした煙の中から爆風に押されて現れたのは、全身真っ赤な金属の機体となった美夜子である。
「変身完了免震設計! めかまじょミヤコ! 誰だか知らないけど、戦えないノリマキくんを巻き込むなあ!」
本日、何度目の変身であろうか。
対峙する美夜子と謎の襲撃者。
だが対峙は一瞬、どちらからでもなく相手へと飛び込んで、かくしてまた激しい戦いが開始されることになったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます