08 戦いの中、父を想う

 畳み掛けるべく、青いめかまじょみやもとなえがまた攻撃を仕掛けた。


「食らえやとりいいい! そりゃあ!」


 青いめかまじょは踏み込みながらキック、パンチ、さらにキック、キック。

 その度に、その鋭い勢いに、ぶんぶんと風を切る音が唸る。

 矢継ぎ早の、連続攻撃だ。

 転校してきたばかりのアウエー感など微塵も感じさせない、早苗の堂々たる戦いっぷりというか堂々たる態度である。


「うひゃ」


 その激しい攻撃の前に、は避けるに精一杯だ。

 頭を下げて回し蹴りをかわし、腕を横に払って正拳を弾き、ちょんと跳ねて足払いをやり過ごし。


 残像すらも見えそうな、素早く猛烈な早苗の動き。

 それをなんとかかわしている美夜子の方も、褒めるべきであろう。


 どうであれ圧倒しているのは早苗だ。

 彼女は自らの作り出すその圧倒に、ふふんと強気な笑みを浮かべている。


 だが、早苗は気付いていなかった。

 慌てながらも運よく無事、そうも見える美夜子であるが、実は落ち着いて、しっかり見切って避けているということに。

 取り囲むギャラリーの目には残像すら浮かぶ早苗の攻撃であるが、残像どころか微塵のブレなくピタリしっかり視界に収めて、捉えた映像を脳でしっかり判断し、予測も働かせて的確な対応をしているということに。


 これは、凄いな。

 コンマ何秒の世界で機体からだを動かし続けながら、美夜子はそう胸に呟いていた。

 自画自賛というよりも……まあそれもあるが、自分と、宮本さんに対してだ。


 これが、めかまじょなのか。

 このなめらかな動き。これが液状軟骨や液状関節の性能か。内蔵されたコンピュータチップの性能か。


 人間型メカというと、ウイーンガシャ、ウイーンガシャ、そんなもったりした感じの印象がどうしても拭い切れないところだが、最先端かつトップクラスの技術は驚くほどに進化しているのだ。

 この百年、情報処理技術の進化ばかりが目立つが、物理科学だってこうして着実に進化しているのだ。


 お父さんは、こんなのを作っているんだな。

 介護ロボとか、義足とか、世界の人々の暮らしをより幸せなものにするために。


 そこは素直に尊敬するけれど、でもその技術をこうして戦いに使っている自分……

 警察に頼まれて嫌々とはいえ、この機体からだでなにをしているかというと戦いばかりだ。


 一体、どんな位置付けなのだろうな。

 お父さんにとって。

 わたしの、存在というのは。

 どんな……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る