09 まずはあなたが会いに来い

 実感はないけれど、わたしは機械の身体。

 父が手術をして、そうなった。

 本当ならば、わたしは事故で死んでいたんだ。

 だから、父に恨みはない。


 一緒に暮らそうとわたしたち母娘を招こうとするのが、もっと早いか遅いかすれば、そもそもの飛行機事故にも巻き込まれなかったのに。そんなタイミングについての不満はなくもないが、父が悪いわけでもない。

 だから、恨みはない。

 恨みはないけど……


 でも、一緒には暮らせない。


 だって、いえるわけがない。

 「一緒に住もう」なんて、こちらからいえるわけない。

 ……まだ、会ってもいないのだから。


 自分は、父の手により機械の身体になった。

 つまり、父は自分に会った。

 でも、自分は父に会っていない。


 抱える色々なもやもやが、解消されるどころか爆増したというのに、直に会ってもいない父と生活に関しての話なんか出来るはずない。


 まずはあなたが会いに来い。

 とっとと会いに来い。

 すべてはそれからだ。

 それが筋だ。


 わたし、間違ってますか?

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