06 たまには料理だってするのだ

「うおおし、出来たぞー」


 とりは独り言をいいながら調理コンロの熱源を止めて、するり胸のエプロンを外した。

 ノースリーブにショートパンツという、美夜子としては非常に露出の多い格好。他人の目を気にする必要のない自宅では、こんな服装でリラックスすることもあるのだ。


 鼻歌混じりに、鍋やフライパンで作った料理をお椀やお皿に盛って、部屋の真ん中に置かれているちゃぶ台に次々と並べていく。

 昨日はカップラーメンで済ませてしまったから、今日はご馳走……というほどでもないが、まあちゃんとした料理である。


 美夜子にとってはなにを食べようとも燃料として大差なく、機体からだの機能にさしたる影響はないとのことではあるが、心への影響が違うというものだ。

 だから予算と時間が許せばこうしてしっかりとしたものを作りたくて、今日は作ってみたというわけだ。


「さっすがあたし、おいしそー。天才っ。絶対にーっ、うーーまーーいーーぞおおーーっ」


 さらにはこうして自分を褒めて、心の栄養に対してドーピングなどをかけてみたりなんかしちゃったり。


「……まあ、食べてみると大概いつも不味いんですけどお」


 がくー、と肩を落として一人ボケ。せっかくの気持ちドーピングを自分で台無しにしてしまう美夜子である。


 さて、これから食事だ、という場面であることは伝わったであろうか。

 ここは、美夜子の住むアパートだ。

 めかまじょなどとマスコミに騒がれることをやっているくせに、生活はこの通り地味、一人暮らしでお金もないため、ジャンクな食べ物か自炊か、どちらかになってしまうのだ。


 さて、美夜子が何故めかまじょになったのかは、せっかく作った料理も冷めてしまうのでいずれ別の機会に語るとして、代わりに、何故こんなところで一人暮らしをしているのか簡単に説明しておこう。

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