07 「しのげ荘」
日和野中央駅そのものは、始発から二駅目。こちらはなんだか便利そう……でもそんなこともないのだ。通学時間は始発でメチャ込みなので、とても座れないからだ。
座れないならまだしも、大荷物を床に置くおじさんがなぜか多くて、押された時に荷物で足を踏ん張れず倒れそうになるし。
いつもはあまり座る気ないからいいけど、たまにそういう気分の時には辛い。
まあ、そんなところだからこそ、新都心にここまで安いアパートが存在するのかも知れないが。
駅からは歩くけど、ちょっと多めにお小遣い貰っているような高校生ならそこから賄えなくもないくらいの、とにかく破格の家賃なのだから。
その分というべきか、建物はとても古くボロく汚い。
昭和時代の戦後復興期のような、歴史の本や映画ドラマでしかまずお目にかかれなさそうな外観に内装だ。
美夜子としてはそこがむしろ気に入っている面もあり、満足といえば満足であるが、電車の席がいつも占められている悔しさはまた別なのだ。
破格の安さで、といっても本来であれば美夜子には関係のないことであるが。
家賃が高かろうとも安かろうとも。
何故ならば、たぶんそこそこの稼ぎがあろう父親がすべて払っているからだ。
このさいたま新都心の郊外に、
美夜子の父親は、そこの所長なのだ。
なら何故こんなボロアパートを選んだのか、ボロがむしろ気に入ったという面もあるが、あまり父親の世話になりたくないからということでもある。
高校生で稼ぎのない身だけれど、恩を受けることは少しでも避けよう思って、価格の安い部屋を選んだのだ。無理をすれば、働いて全額叩き返すことも不可能ではないし。
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