番外   教えてサツヒト!(吾妹子特集)

        〜おまけ〜



      【教えてサツヒト!】 

       (吾妹子あぎもこ特集)


 加須かぞ 千花ちか(以下、加須かぞ)「皆様、こんにちは。

 本日は、上毛野かみつけのの衛士卯団えじうのだん少志しょうしとしてご活躍中の、遠野とおのの薩人さつひとさんに来ていただきました。」


 ───パチパチパチ。(観客の拍手)


 加須「卯団うのだん一の遊び人として名高いこの方に、本日は、吾妹子あぎもこのちょっとした疑問点をご解説いただきたいと思います。」

 薩人さつひと「どもども〜。薩人です。」




    〜そもそも吾妹子あぎもことは〜




 加須「さっそくですが、吾妹子あぎもことは愛人のことですよね?」

 薩人「そうだよ。一回手をつけただけじゃ、吾妹子とは呼べないな。何回も足繁く通う女じゃないと。」


 ───ヘェ~。(観客の声)


 加須「遊行女うかれめ遊浮島うかれうきしまにいて、大勢のお客の相手をするのに、愛人っていうのが、良くわからないんですが……?」

 薩人「吾妹子あぎもこにはあるんだよ。

 一、屋敷を用意してもらって住むおみな、妻ではない、二人目、三人目の女ね。

 男が女の家に通う、通い婚もここに含むよ。

 二、遊浮島うかれうきしまで、一人の金払いの良い客のご贔屓ひいきになる女。

 この。」


 ───フゥーン。(観客の声)


 加須「なんで、そんなややこしいんでしょう?」

 薩人「そーだなぁ。

 わかりやすく言うと、屋敷を用意してもらう吾妹子あぎもこが、本物。

 遊浮島うかれうきしまのは、真似っ子の吾妹子あぎもこって言ってもいいかもな。

 先に、屋敷を用意してもらう吾妹子がいて、それにちなんで、太い客を捕まえた遊行女うかれめ吾妹子あぎもこって言うようになったんだよ。」

 加須「なるほど。」




    〜もし古志加こじか吾妹子あぎもこになれたら?〜




 薩人「もし古志加こじかが三虎の吾妹子あぎもこになれたら、本物のほうね。

 どーなるかな〜。

 屋敷をもらって、屋敷の女主になるのかな。 

 もしかしたら、古志加が若いうちは衛士を続けたいって言って、昼間は衛士、夜だけ三虎の部屋に通うようになるかもな。

 なにせ、女の衛士なんて、古志加しかいないから、どうなることやら……。」


 ───フゥゥーン。(観客の声)


 薩人「まあ、どっちにしろ、一晩で終わらせないなら、吾妹子あぎもこって言えるね。」

 加須「わかりました。」




    〜について〜




 加須「遊行女うかれめ吾妹子あぎもこにしたおのこは、と呼ばれるんですよね?」

 薩人「そう。裕福な男じゃないとなれない。

 遊浮島うかれうきしまに足繁く通い、かつ、遊行女うかれめが衣に困れば、衣を新調してやり、体調を崩せば、薬草代を出す。

 そういったお世話ができる財力がないとね。

 その上で、どの男をにするかは、遊行女の自由だ。

 おのこは、おみなに気に入られなきゃ、ダメなのさ。」


 ───そーなんだー!(観客の声)


 加須「吾が夫って言っても、男性側から見て、あまり魅力ある関係ではないような……。」

 薩人「そんなことないさ!

 浮刀自うきとじ(遊浮島の女将おかみ)から他のおのこより優先して順番を回してもらえるようになるし……。」

(※加須 千花の注釈ちゅうしゃく……遊行女は一晩に一人の男しか相手しない。人気の遊行女うかれめは予約で何日後となる。)

 薩人「になると……。」

 加須「吾が夫になると?」

 薩人「吾妹子あぎもこが、それはねむころに奉仕してくれるってよ。

 ねやだけじゃない、酒肆しゅし(酒の席)の段階から、しっぽり、特別扱いしてもらえる。

 やっぱ!

 おのこにとっては!

 そういうの!

 たまらんのよ!」

 加須「ジャー薩人サンモ吾妹子アギモコイルンデスネー。(棒読み)」

 薩人「いねぇよ!  

 オレは遊浮島うかれうきしま全ての女を愛してるの! 

 みーんな、みーんなと遊びたい。」

 加須「………。」

 薩人「………。」


 ───…………。(観客、無言。冷たい静寂せいじゃく




  〜遊行女うかれめ遊浮島うかれうきしまから出すには?〜




 加須「にならないと、遊行女うかれめ遊浮島うかれうきしまから出すことはできないんですか?」

 薩人「いや?

 遊行女うかれめっつっても、浮刀自うきとじの持ち物だからな。

 浮刀自うきとじと合意すれば、吾妹子あぎもこでなくても、遊行女うかれめを自由にしてやれる。

 でも、だろうが、そうじゃなかろうが、浮刀自は、足元を見た、法外な金額をふっかけてくるぜ?

 遊行女を自由にする金額なんて、浮刀自が好き勝手決めるからな。」

 加須「なるほど……。」


 ───なるほどー!(観客の声)


 薩人「ただし、浮刀自は、遊行女が妊娠したり、病気がちになったら、に優先的に、女を譲り渡すんだ。

 その時は、大きく金額を下げるって言ってたよ。」

 加須「良くわかりました。薩人さんも、いつか遊行女を遊浮島から出して、妻にしたいって思ってるんですか?」

 薩人「うんにゃ? 財産ないもん。」

 加須「うん?」

 薩人「全身全霊、全財産を注ぎ込んで、遊浮島のお姉さま方に貢いでる。

 遊行女を出す財産なんて、持ってねぇよ?

 ろくがでたら、すぐ、遊浮島に行くんでね!」

 加須「…………ダメだこりゃ。」


 ───ダメだこりゃ!(観客の声)





 加須「お時間、ここまでです。

 本日はありがとうございました。」


 ───パチパチパチ。(観客の拍手)


 薩人「ありがとうございました! また呼んでね!」

(※加須 千花の注釈……その予定はない)






     インタビュアー 加須かぞ 千花ちか

     解説者 遠野とおのの 薩人さつひと

        (上毛野かみつけのの衛士卯団えじうのだん少志しょうし


 




 ※架空です。







 ↓きんくま様からファンアートを頂戴しました。

 きんくま様、ありがとうございました。

https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16818093074566754783

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る