秘密の吾妹子、其の一
「布多未! その子は三虎を……!」
「姉上。三虎が悪い。」
日佐留売に最後まで言わせず、布多未はピシャリと言う。
「三虎がさっさと
オレはちゃんと三虎に機会は与えたぜ?」
本当だ。
「おすすめしねぇぜ?」
とちゃんと言ってやった。
日佐留売もぐっと言葉につまる。
「大丈夫だ、姉上。オレの強さは知ってるだろ?
そう笑ってみせると、日佐留売は真剣な顔で、
「ちゃんと、頼みますよ、布多未。」
と布多未を見送った。
ぼんやりとされるがままの古志加を抱き、日佐留売の部屋をあとにする。
* * *
布多未には
ちゃんと愛し、大事にしている。
ではそれで、他の
時々はそういう衝動もある。
だが、鏡売を泣かすことはしない。
それゆえ、
父の
オレも
……だが、父とは違う。
久しぶりに、そそられる
目の輝きが強く。
剣の腕も強く。
まあ顔の作りも良いのだが、そんな事より、剣で仕合ってる時、紅潮した頬で笑顔を浮かべ斬りこんでくる姿が、信じられないくらい色っぽい。
こんな女は、
だが、三虎に恋してると、姉に事前に釘を刺されてもいるし、すすんで
(少々惜しいな。三虎もバカなヤツ……。)
と思っていたら、とことん三虎がバカだった。
そして今、古志加はふわふわした表情で、布多未の部屋に立っている。
上毛野君の屋敷の外の、鏡売がいる
あたりには薄く、布の防虫のための、すっきりとした
布多未は香りにこだわらない。
机、倚子、
黒揃えが布多未は落ち着く。
だが、細工は凝ったものではない。
家具に布多未はこだわらない。
今、身支度を整える
布の下には、鳥、馬、兎、
その翡翠の
布をかけておく必要があった。
(姉上は、オレが
姉上にどう思われても別にかまわない、と思うのに、どうでも良い細かいことが、なぜか気になってしまう。
この部屋で贅沢なものといえば、
壁際に設置した寝床に四本の柱を立て、白く薄い
集中して良く眠れるようにだ。
()良い眠りは身体のために必要だからな……!)
部屋に入ってすぐ、目立つ一角には、
古志加はこの部屋で布多未の腕から降ろされ、床に立った時は、部屋をふっと見回したが、そのあとはどこを見るというわけでもなく、一言も喋らない。
ずっと黙っている。
衛士だったら、誰でも目を輝かせ、興味津々になるであろう、立派な剣も、まったく興味を示さない。
本当に
布多未は、古志加の、両頬を青あざで腫らした、だが元の作りは良い、若い
(まあ、こうなるよなぁ……。)
と思う。
これは
本当に古志加は
時々布多未が稽古してやれば、もっと剣の腕を伸ばせる。
(それには、元のしゃんとした古志加に、早く戻さんといかんな。
……一発!)
布多未は素早い動きで、隙だらけの古志加の唇を、さっ、と盗んだ。
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