第二話 恋者麗澤 〜れんじゃれいたく〜
※
友人同士で励ましあう。
* * *
「
人払いした
もう
だから、ここには二人だけだ。
「あたし、あたし、苦しい……。
どうしよう、日佐留売。
あたし、三虎を恋うてる。
勝てっこない、あんな綺麗な人に。
三虎に
うっ、う……。うぇぇん……。」
日佐留売は泣きじゃくる古志加を胸にだき、頭をなでてやった。
もうはじめから、古志加が三虎を恋うているのは、わかっていた。
古志加が鼻をすすりながら、
「ごめん、日佐留売……。
ぐすっ。
あたしみたいな親なしの
と言うので、日佐留売の心の琴線に触れた。
「そんなことないわ! 姉だから、弟だからとか、本当に恋うているなら、関係ないわ!」
つい強い声がでた。
……心の奥底の秘密だが。
三虎の姉でなければ良かったと、三虎を恨んだ夜がある。
「本当に、恋うているなら……。」
そこまで言って、日佐留売は口を引き結んだ。
「……日佐留売?」
日佐留売の言葉の、思いがけない激しさに、古志加が
日佐留売は、古志加に優しい笑顔をむけ、
「良い物があります。」
と机の上の置いてあった
なかから、まばゆい金の
これは、大豪族の
「きれい……。」
古志加の口から言葉がもれた。
日佐留売はその美しい簪を静かに見つめ、
「もう六年もたつのね……。」
と小さな声でつぶやいた。
そのまま古志加にむきなおり、優しい眼差しで、古志加を見た。
「これをあなたにあげるわ、古志加。」
「えっ、こんな高価な物、いただけません。」
と古志加が困り顔で言う。
かまわず日佐留売は続ける。
もう、決めたのだ。
「これを誰からいただいたのか、
また、あたしから譲られたことも、口外してはいけません。
ただ、これは
本当は、
この
そう言って、日佐留売は古志加の手を取り、金の
「日佐留売、そんな大事なもの……。」
「いいのよ。お腹の子が
「えっ、日佐留売、お腹に……?!」
日佐留売は笑顔で頷く。
古志加が日佐留売に抱きついた。
「おめでとう、日佐留売!」
「ありがとう。」
日佐留売と
我が子を、主のために盾となれ、と教えながら育てる辛さ。
浄足は
だから……どうしても二人目が欲しかった。
三虎は、どこの誰が見ても立派な従者として成長した。
我が母ながら、その手腕を尊敬してしまう。
「古志加、前にも言ったけど、三虎は幼い頃から大川さまを一番に考えるように育てられてきたの。
そのせいかわからないけど、なんだか、
姉として三虎を見てきて、そう思うの。」
そうよ。
たとえ
負けちゃダメ。
古志加が体を離し、
「まだ、良くわからないと思うけど、待つのよ、古志加。
あなたはきっと今に、そう何年もしないうちに、誰よりも美しい、この金の
三虎の心を捕らえられるほどの。
それまで待つのよ。
そして時が来たら、迷わず三虎の胸に飛び込むのよ、いい?
それまで、この金の簪を、大切に、持っておきなさい。」
一途に、ひたむきに、三虎を恋い慕うこの娘に、この金の簪は、大きな心の
古志加はポロポロと涙をこぼし、
「うん、ありがとう、ありがとう、日佐留売……。」
と金の簪を握りしめた。
それを見て、日佐留売の胸が、かすかに、……震えた。
(良かった……。あたしは心から、古志加に金の簪を譲ってあげたい、と思えた。
手放すことができて。
本当に良かった。)
* * *
(※注一)
(※注二)
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