第三話
「
と気軽に聞いてみた。
薩人は
それなりに
もう妻がいて、子供の二、三人いてもおかしくない年だ。
「ん────?」
白酒を飲み終わった薩人が、
ずいぶん伸ばした返事をした。
「オレはねぇ、一人の
とある場所で、新しいかわいい女が入ってくると、どうしても
皆いろんな話をしてくれる。
皆いろんな……ンン!
とにかく、
いつまでも知り尽くすことはできない……。
オレは多くの
薩人は細い目をキラキラさせて、両腕を広げてみせた。
古志加は顔をしかめ、
「うえぇ……。」
と言い、
「何言ってるか、わかんない。
でも、とある場所がどこかはわかる。
───いやらしい。このタコ野郎。」
と言ってやった。
国司さま相手の
と、女官部屋の皆にきいた。
薩人は、何が楽しいのか、
「いい!」
と言って大笑いし、
「やぁ、すまんすまん、我が若妻に聞かせるような話じゃなかったよ。
あっちに
何か買ってやるよ。」
と、優しい笑顔で
片方の手を古志加の背にそえた。
(
と少し心が動いたが、
(……欲しくない。)
「いい。いらない。
それよりまだ何か食べたい。
サッパリしたヤツ。」
と古志加は言った。
白酒を飲み終わった木の器を、白酒売りの
* * *
「そこのお二人さん。
うちのノビルの塩漬けを食べてっておくれよ。
国分寺の霊水で育った、霊験あらたかなノビルだよ。
食べてから国分寺にお参りすれば、み仏さまの覚えもめでたいってものさ。」
と、ノビルの塩漬け売りの
霊験あらたかなノビルなど、どこまで本当かわかったものではない。
でも、サッパリしてそうだ。
ちょいちょい、
と薩人の袖を引っ張り、
「食べたい。」
と言う。
「そうこなくっちゃ!」
と、答えたノビルの塩漬け売りを見て、
───おや。
と思ってしまった。
ずいぶん面長で、鼻が大きい顔で。
(ちょっと、馬に似てる。)
と思ってしまったが、こんな失礼なことを思うのは良くない。と目を伏せる。
その後、薩人と二人で食べたノビルの塩漬けは、塩がきいて、ノビルの青さがみずみずしく、春らしい苦さも感じて、サッパリ食べれた。
* * *
ノビルの塩漬け売りの店を出て、いよいよ国分寺が近くなってきた。
遠くから見えていた七重の塔が、近づくとますます大きい。
国分寺自体は古志加の背より高い
「わぁ……!」
中がすごく広い。
柳の木が
塀のなかに、また一つ塀があり、門がある。
遠くから、多くの
西にはとにかく高い高い、天をつくほどの七重の塔。
「門をくぐると別世界だぁ……。」
あっけにとられていると、
近くで
「
と声をかけてきた。
古志加は、はぁ、と言い、薩人は、
「そうなのです。オレは、オレは……ッ、こんなに可愛らしい妻がありながら、他の
くっ、と言って目もとを押さえた。
古志加は口をあんぐり開けて、薩人を見た。
肩幅が広く、堂々とした態度の袈裟を着た
「この
すなわち
み仏に一心に祈れば、必ずや救われましょう。」
と礼をした。
* * *
なんだか本当に、
楽しく市歩きをしてるだけみたいだ。
南大門をくぐり、帰り道につきながら、
「こんなので良いのかなぁ?」
とつぶやくと、
「殺人者が、いつどこで見てるかわからない。何日かかかるかもしれない。耐えろ。」
と薩人が笑わず言ったので、
「うん、頑張る。」
と古志加も言った。
「そう、良い子。」
と薩人が、古志加の頭を手のひらでグリグリ撫でた。
それは
されるままに、ニッコリ笑い、
「うん。」
と返事をした。
↓挿し絵です。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16817330662869733755
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