第二話
国分寺にお参りした夫婦が、行方不明となる。
そんな怪事件が、ちまたで噂になってる。
若い夫婦で、パッタリと行方が知れなくなってしまうらしい。
その噂なら聞いたことがある。
もう十人、そうやって消えてしまったそうだ。放っておけない。調べることになった。
そこで
* * *
ふいに、隣を歩く薩人に、前髪を、ちょん、と触られた。
薩人は、つるばみ色の黒っぽい
「ひゃ……。」
とビックリして変な声がでる。
「葉っぱ。ついてた。」
と薩人が手に一枚の葉っぱをヒラヒラさせながら、
細い目をさらに細くし、笑った。
「そんな、かまえたら駄目だよ。今は
と言った。
「うん……。」
困って、赤くなって、うつむいてしまう。
もういい加減、女官姿の自分には慣れたが、女官は屋敷の外に出ない。
人目が気になって、落ち着かない。
四月。
春の陽射し。
道ばたには、白いセリや、黄色いスズナ、桃色のカタカゴなどが咲いている。
薩人は二十六歳だという。
古志加と十二歳も離れている。
でも、そういう
古志加は十四歳。
でもギリギリ、この年で
おかしくはない。
おかしいのは……。
「
あれ……オレのこと、そんな嫌いだった?」
弱ったなァ、と薩人が頭をかく。
「あ、そうじゃない……。」
古志加は顔をあげる。
「あたし、
男が女の格好してるみたいで、おかしいだろ……。」
と肩を落とすと、プッ、と薩人が笑った。
「そんなことないよ。
良く似合ってるって言っただろ。
オレのこと嫌い?」
「嫌いじゃ……。」
と古志加は言おうとして、
すっと目の色が冷たくなった。
「あたしに
薩人が大笑いした。
明るい笑い声。
悪い奴じゃないんだよなぁ……。
古志加にとって、荒弓の年は良いおじさん、薩人の年は良いお兄さん、だ。
つられて古志加も笑う。
「あっちで
一緒に飲もうぜ。」
白酒! ……いいなぁ!
米の粒が浮いて、ふわっと
「うん! 白酒、飲みたい!」
「白酒二つ、この米袋でどうだい?」
と薩人が白酒売りの三十代の
「中を見せておくれ……。いいよ。」
「ちょっと多めに盛っておくれよ、
お願い……。」
とすかさず古志加が笑顔で口を挟む。
「ん? おや、可愛らしい
良いよ! おまけしてあげる!」
「ありがとう。」
と言って、古志加は真っ赤になってしまった。
目刺しの前髪をあげて、額をだし、大人の髪型になる。
今の古志加は、
(ヒィ……。つらい……。)
白酒を飲みながら、
古志加はげっそりした表情で、
「なんとか
と報告したら、また薩人が大笑いした。
* * *
人通りは多い。
いろんな店が、道の両脇に軒をつらねている。
板鼻郷では、もっと、生活の品をより得に交換しよう、という熱気があった。
この南大路では、もっとのんびり、市歩きを楽しむために、時々、食べ物や飲み物を買って、衣を見たり、珍しい掘り出し物を見たり……、と、ブラブラしてる人も多かった。
皆、楽しそうに話をしながら歩いていて、人数が多いので、板鼻郷とはまた違う華やいだ熱気があった。
古志加も、来ようと思えば来れる場所だが、交換できる手持ちもなかったので、足を踏み入れたのは初めてだ。
↓きんくま様から、ファンアートを頂戴しました。きんくま様、ありがとうございました。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16818093073131396784
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