第七話 スミレのつぼみのように
※著者より。ここは幼児が天に召される確率が高い世界なので、誕生日を祝う習慣はないという世界観です。
* * *
そして十二月は去り、
一月。
あたしは十二歳となった。
───年が新しくなれば、皆等しく、一歳年をとる。
女官の仕事を覚えはじめ、四十日くらいたった頃。
やっと、
「寝る時は、女官の部屋で。
これから時々、女官としても呼ぶから、仕事は忘れないように。」
それだけ
髪は
すごくスッキリした気分で、高揚しながら衛士舎へいそぐ。
(
……いた!)
「三虎!」
駆け寄って、その胸に飛び込もうとしたら、
「止まれ。」
三虎が両手の平を前につきだし、制止した。
「もう抱きつくな。」
その三虎の手の平のところまで近よって、
「えっ?」
と古志加は言った。
「不用意に抱きつくな。」
古志加はムッと唇をつきだし、くるっと
「皆! 帰ってきたよぉぉ──。」
と
おかえりー、と皆に頭を撫でられ、首に腕をまわされ、皆でキャッキャッと抱き合った。輪の中心のなかで、
「あたし大変だったよぉ──。」
と古志加が叫び声をあげている。
「あっ……、オイ!」
と三虎が苦い顔をするが、隣にいた
「別に下心があってのものじゃありません。
皆、喜んでるんです。
これくらい、良いでしょう。」
と三虎に言い、その場で、
「おかえり、古志加ー!」
と大声をだした。
三虎はイライラとため息をついた。
荒弓の言うことはわかる。
だけどお前らは女官姿の古志加を見てないから……。
* * *
日佐留売に古志加を預けてから、再び古志加を目にしたのは、ずいぶん日にちが経ってからだ。
(……へぇ!)
女官はさまざまな年の
まだ十一歳の古志加はあきらかに小さく、
まだ
だが涼やかに髪を結い上げ、美しい
のびやかで。
可愛らしかった。
こちらを見て、心から嬉しそうに笑った。
……頬を染めて。
こちらも笑顔をかえす。
その古志加の頬を
古志加は慌てて難隠人さまの世話を再開する。
そしてオレは、
「……ちょっと。」
と日佐留売に部屋を連れ出された。
* * *
「見たでしょ? かわいい
あなた本当に気がつかなかったの?」
「この姿なら間違わない。でも会ったときは
姉がずいと詰め寄る。
「夜、ずいぶん近しく接してたって、古志加に聞いたけど?」
何を話したんだ、古志加。
「
「……それだけ?」
「それだけです。」
思いきり頬をつねられた。
「………!」
何をするんだ姉上。
と思いつつ無言で堪えた。
「小さくても
これからは、ちゃんとあつかってちょうだい。」
「はい。」
頬をさすりつつ、三虎は答えたのだった。
* * *
古志加はあたりを見回す。
いつもと様子が違う。
この
卯団だけじゃない。三十人以上、
「どこか行くの?」
返事がかえってくる前に、遠くから人馬が走ってくるのが見えた。
薩人はひらりと馬を降り、すぐに荒弓と三虎のところへ向かう。
「
「よし。
三虎があたりに声を響かせる。衛士たちが皆馬に
「古志加! 来い!」
三虎に呼ばれた。馬上の三虎に駆け寄ると、
「乗れ。」
左手を差し出してきたので、手をとると、ぐいと馬上に引き上げられた。
三虎の前に跨がる。
「行くぞ!」
薩人、三虎を先頭に、
「三虎、どこへ?」
「おまえも知ってるところだ。見届けろ、古志加。
だが手はだすな。ケガしないよう下がっていろ。いいな。」
とだけ三虎は言った。
* * *
「門を開けろ! オレは
開門!」
と言われては門を開けないわけにいかない。
あとは一気に人馬が屋敷内になだれ込む。
あちこちで、
「わあっ!」
「きゃあ。」
と
人を
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