第二話 はちすの花びら、其の一
十六人の
「三虎……!」
「なんてことを……!」
「無理やり、無理やりはいけません!!」
「ばかやろう!」
三虎が大声で怒鳴った。
「こいつ
どういうつもりだ!
今まで気づかなかったのかよ、バカ!
まさかお前ら……。」
そこで三虎は全員を
「変なこと、こいつに……!」
手をつないだ
「変なこと、ってなあに?」
と三虎に聞いた。
皆は、してない、してない、と首を振る。
「ちゃんと
だってねーぇ、と皆が顔を見合わせる。
「朝一番に
「掃除も洗濯も気がきくし、
「あの温度いいよねぇ。」
「ばか───ッ!」
三虎が声をかぎりに叫んだ。
「あたし、他の住まいに移されちゃうの?」
と
「三虎だって気がつかなかったじゃん、あれだけ一緒に寝てて。」
と言った。
「ばっ……、あっ……?!」
三虎は目を白黒させる。
……あの
赤ちゃんみてぇだ、なんて
オレなんで気がつかなかったんだ。
嘘だろ……。
自分のしてたことがにわかに受け入れがたい。
本気で
「とにかく、もうここには置いておけん。
姉上のところへ連れてく!」
と宣言すると、
「やだ、あたし、ここにいたい、皆と一緒にいる。どこにも行きたくない……!」
と叫び、うわぁん、と泣きだした。
皆がホロリとした顔をする。
「あたしを捨てないで。ここにいさせて。」
と泣き続けるので、皆が一緒に
* * *
一歳となった
「そうそう、お上手。」
おっとりと、優しげな顔立ちの美女だ。
ぬばたまの実のような黒々とした髪が、たっぷりツヤツヤとしている。
同じく一歳の
「うー、あ!」
「あぅ!」
ぎゃあん……。
と
「あぁ……。難隠人さまのものを
と日佐留売は我が子、浄足を抱き上げた。
難隠人さまをひょいと抱き上げたのは、父である
「喧嘩はダメだぞ、仲良く遊びなさい。難隠人。」
怒られてるのがわかり、難隠人さまが、
「あぅあぅやッ!」
と体を突っ張って暴れた。
大川さまは穏やかな笑顔で、
「はは……元気な子だなあ。」
と自由にしてやる。
ここは本来は、大川さまの妻の部屋だが、大川さまは妻を娶ろうとしない。
なので、
今、この部屋には、日佐留売と二人の
大川さまは、髪の毛を下半分垂らし、胸下まで黒い絹糸のような髪を、真っ直ぐ流している。上半分は小さな
銀花錦石は、鮮やかな白、橙、白濁した白、くすんだ
大川さまは、今日、奈良から帰られたばかりだ。
(良いお父上だわ……。)
並の
……心のなかは、誰にも知られてはいけない。
↓挿絵です。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16818093078355221964
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