第3話
浜田の指示でクラスメイトたちは無人島で食糧探しを始めた。
「食べられそうなキノコ、魚介類、動物とかを探そう…!みんなで手分けして探すんだ…!」
生徒たちは森の中に入ったり、海の中に潜ったりしてとにかく食べられそうなものを探している。
「お?なんか食えそうなキノコ見つけた
ぞ…!」
「こっちはカニ捕まえたぜ…!小さいけど腹のたしにはなるだろ」
「いいね。みんなその調子だ」
生徒たちは食べられるかもわからないキノコや、食べても対して腹の膨れない小さなカニなんかを見つけて喜んでいる。
そんな彼らを側から見ていた俺は誰にも聞こえないように小さく呟いた。
「こんなことしてもイタズラに体力を消費するだけだ」
こんな食糧探しならまだ何もしない方がマシだ。
みんなでがむしゃらに歩き回ったって、それで三十人を超えるクラスメイト全員の食糧が見つかるはずもない。
「ど、どうする…?翔ちゃん」
隣から彩音が俺を不安げに見てくる。
「そうだな……彩音。とりあえず食糧を探しているふりをしながら森の中に入るぞ」
「森の中…?何するの?」
「もちろん飲み水を探すんだ。俺たちまで体力を悪戯に消費してたら脱水症状を起こす。その前に飲み水を確保しておこう。誰にも気づかれないように静かに抜け出すぞ」
「わ、わかった…」
俺と彩音は誰も見ていないか辺りを見渡して、少しずつクラスの集団から離れていく。
「ん…?」
「どうかしたの?翔ちゃん」
今一瞬誰かの視線を感じたような気がしたが、気のせいだろうか。
俺は周囲を見渡すが、しかし周りには誰もいなかった。
「気のせいか……いくぞ彩音」
「う、うん…!」
俺は彩音と共に飲み水を探しに森の中へ入っていく。
浜田の指示で北高校二年B組の生徒たちが食糧を探し始めてから数時間が経過した。
最初こそ勢いで辺りを動き回っていた生徒たちは、照りつける太陽に次第に体力を奪われ、動きも鈍くなってくる。
「く、苦しい…」
「水が飲みたい…」
「お、思ったより食べられそうなもの少ないな…」
「やっぱり佐久間くんの言う通りに水を探したほうが良かったんじゃ…」
「しっ…浜田たちに聞かれたらどうするんだ…?無人島で仲間外れにされたら終わりだぞ…!」
生徒たちは声を潜めてそんな会話をする。
薄々生徒たちはまず飲み水を探したほうがいいという翔太の指示の方が正しかったと気づき始めていたのだが、しかし浜田に逆らうとどうなるかわからないため言い出せなかった。
「と言うか浜田は…?」
「さあ。どっかで休んでるか、私たちのこと見張ってるんじゃない…?」
「マジかよ怖ぇ…ちゃんと食糧探すふりしとこ…」
生徒たちはいつの間にかいなくなっていた浜田に首を傾げつつも、見張っている可能性を危惧して食糧を探しているふりを続けるのだった。
「見つけた…!」
「嘘!?本当に!?」
彩音と共に飲み水を探して森の中を彷徨うこと数時間。
俺たちはついに飲み水を得られるスポットを発見していた。
目の前に聳える巨大な岩。
その裂け目から湧き水のようなものが流れていた。
俺は口に含んで飲んでみる。
「美味しい……飲めるぞこの水!」
「本当!?私も飲んでいい!?」
「ああ、もちろんだ」
「うわ本当だ…冷たくて美味しい……なんだか涙出てきた…」
俺は彩音と共に冷たい真水を味わった。
しばらくして十分に喉の渇きも癒えた俺たちは、このスポットをクラスメイトたちに教えるために元の場所に戻ることにした。
「みんなきっと喜ぶよ!」
「だろうな。ったく、浜田には反省してもらわねーとな。絶対に今ごろみんな喉乾いて苦しんでるぜ」
「あはは。まぁまぁ」
俺は彩音にそんな浜田の愚痴を言いながら、来た道を戻り始めたのだった。
ガサガサ……
「ん?」
「どうしたの翔ちゃん」
「今、何か後ろで動いたような…」
「動物か何かかな?」
「わからん……まぁいいか」
その時の俺は気づかなかった。
俺たちが飲み水を探すために森の中に入ってからずっと俺たちの後をつけていた『尾行者』の存在に。
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