第84話 四龍の秘密

契約の話しが纏まったのでデザートのプリンを出した。

今回は、生クリームで飾り、フルーツを添えたプリンアラモードだ。

水龍の目が輝いた。


「では、水龍さんの名前はディーネさんでどうかな?」


「こ、これは美しい。芸術の域に達しているわ。」


全く俺の話を聞いて無い。

目の前のプリンに夢中だ。

スプーンでプリンをすくい、口にするとまた勢いよく立ち上がった。


『ゴー、ゴゴゴゴゴゴゴ、ドカーン!』


龍神島の中央付近から土煙があがり、上空に巨大な青いが現れた。


神龍シェンロン?」


「主様、神龍とは何ぞ? あれは水龍本体じゃ。あれ程気を付けろと言ったのにやってしまったな、水の龍よ。」


「ご、ごめんなさい・・・。美味しすぎるのが悪いのです。」


ゆっくりと降りてくる水龍本体。

それから目を開けて入れない程輝き、神秘的な美少女が現れた。

濃紺のロングストレート髪で、ディーネさんの面影がある小柄な少女。

その美しさに凝視していると、少女は顔を赤らめ俯いた。


「・・・。」


「ん?」


「水龍様が、恥ずかしいからそんなに見つめないで欲しいと申しております。」


ディーネさんが通訳をしてくれた。


「・・・・・。」


「私にもプリンをいただけないかと申しております。」


「そうなの? はい、どうぞ。」


「・・・・・。」


「ん?」


「すごく美味しい。私と契約しましょうと申しております。」


すごく面倒臭い!

通訳が必要ってどういうことだ。

でも、思念体と契約するより本体と契約した方が良いよね。


「ルビー、どうしたら良いのかな?」


「もちろん、本体と契約するべきであろう。支配下にある思念体ももれなく主様の配下となる。」


「そういうものなのか。じゃあ、水龍さんと契約します。」


契約が成立した途端に水龍からの念話の嵐が・・・。

あれだ。リアルは陰キャだが、SNSでは暴言吐いちゃうタイプの子だ。

すごく俺の料理を褒め称えてくれる。

とても嬉しいのだが、うっとおしい。


「はぁ~。」


「主様、大丈夫か?」


「ああ、大丈夫だ。それより水龍さんの名前なのだが、見た目が清楚大和撫子風なので和名が良いかな。それじゃ、スミレでどう?」


濃紺な髪、可憐さ、まさにスミレのイメージだった。見た目はね!

・・・。すごく嬉しいそうだ。

長文の感想文が辛い。


「ところで、スミレさんは俺たちについてきても大丈夫なのか?」


「さん」はいらないらしい。

するとディーネさんが前に出た。


「私がここを守っているので問題ありません。でも、差し入れを期待してますね。」


ディーネさんがここを死守し、海の平和を守ってくれるそうだ。

それに魚の密度が増えすぎていることも問題なので、うちの漁の手伝いもしてくれるらしい。

これで魚介類の仕入れの問題は解決だ。


港に戻って新たに漁船を作り、お抱え漁師を増やした。

これで各地への卸しも可能となるだろう。

それから我が家に戻りスミレの紹介をした。

いつの間にかスミレは手のひらサイズの子龍となり左肩に。

右肩にはルビーが。

俺の両肩が龍たちの定位置となっている。

あと2体の龍が仲間になったらどうしようかな。


「ねぇ、ルビーとスミレ。残りの2龍の話を聞かせてもらえるかな。」


「残りの龍は、土龍と風龍じゃな。両龍ともに雄なのだが、土龍は引きこもりの根暗だ。良く知らん。風龍は、逆に陽キャで軽い。軽すぎる。信用ならん龍だ。歯が浮くようなセリフばかりいう。」


「うんうん。」


二人とも良い印象を持っていないようだ。


「我々四龍は、必ず雌雄2:2で産まれるのじゃ。そして、その間で子をなす。その子は必ず2体産まれ、それぞれ親の龍の属性を受け継ぐのだ。それが、我々の代で問題が起きた。土龍は社交性皆無、つがいを作るつもりが無い。風龍は、不能。生殖器官を持たず、子をなすことはできない。よって、我々の代で四龍の歴史は終わる。はずじゃったが、主様が現れたというわけじゃ。これから新しい歴史が始まるのじゃあ。」


「ちょっと待て。そもそも俺はヒューマンだ。龍との間に子ができるのか?」


「何を言っておるのじゃ? 主様はとおに人間を辞めておるだろうに。神の使徒であり、人外の魔力を有しておるのじゃぞ。すでに神に近い存在ではないか。為せば成るじゃ。人化すれば問題なかろうて。」


「そういうものか? はっ! いつの間にかお前たちと子を作ることになっているじゃないか!」


「フフフ。主様、我はいつでもウェルカムじゃぞ。」


「・・・・。『わたくしもですわ。ウフフ』」


「ゴホン。ところで、スミレは土龍と風龍の居場所はわかるのか?」


『土龍でしたら西の荒野で引きこもっていましたわ。おそらくあの引きこもりはそこから移動してないと思いますわ。風龍は棲みかを持たずに常にフラフラしているので、今どこにいるかは分かりませんわ。』


次は居場所が分かった会いに土龍に行こう。

コミュニケーションがとれるか不安しかないが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界で唯一の錬金術師 ~家族と領民のために自重はゴミ箱に捨てました~ 蒼い空 @sky_blue

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ