第16話 

 デジタルネットの青白い光の世界をアイシャの意識が泳ぐように進む。

 端末データに用はない。

 狙うはメインコンピューター!!


 恐れることなく深部に潜り続けていたアイシャはとある異変に気づいた。


「これは……」

 手応えがない。データの部屋がない。ここはメインコンピューターの内部じゃない、ダミーだ!

 アイシャは慌てて意識を引き抜いた。


「やられた。罠よ、全て読まれてた。メインコンピューターは切り離されている。ジャガーノートの起動は別ルートよ!」

 弾かれるように立ち上がりながらダンにそれだけ伝えると、アイシャは降りてくるスロープを駆け上がった。


「どこへいくんだ!?」

 背後からダンが叫ぶ。

 城壁に立ったアイシャはちょうどジャガーノートを見下ろす位置にいた。


 シヴァ神の額に埋め込まれたセンサーが陽の光を浴びて輝いている。


「メインコンピューターから、あのセンサーに何らかのアクセスがあるはずなのよ」

 神経を研ぎ澄ませたアイシャの耳に歌が聞こえた。


「これは……公営放送!」

 アイシャはポケットから偵察機を取り出した。

「周波数一致、アクセス可能!!」

 アイシャは公営放送の電波に乗って意識をジャガーノートに飛ばす。


「いけない……メインコンピューターの指令データが大きすぎる。今のままでは容量負けしてしまう!」


 瞬時にそう判断したアイシャは、ジャガーノートに向かって城壁の上から身を投げた。

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