第9話 極秘ファイル
ダンがこのAWに来て一年が経とうとしていた。技術者であるダンのおかげで、最底辺の暮らしはみるみる向上した。
「あまり目立つことはするなよ」
「わかってる!」
ダンの作った偵察機を経由して城壁の上に設置された定点監視カメラにアクセスルートを確立したアイシャは、慎重にハッキングを進めていく。
「メインコンピューターには手を出すな。データを触る程度なら末端端末で十分だ」
ダンの指示に従い、アイシャは末端端末のアクセス権を盗む。アクセスコードを持たないアイシャは不正アクセスの痕跡を残さない。
「BWの奴ら、まさかAWから搾取されてるとは思ってないわよね」
アイシャは食料プラントの廃棄ロットに変更をかけながら楽しそうに笑う。
これにより食べられる食材が大量にAWへ捨てられる。アイシャとダンのこの作戦のおかげで、アングラの食料事情はかなり潤っていた。
「アイシャ、ついでにちょっと調べてくれ」
いつもはすぐに撤収をかけるダンの頼みに、アイシャは気を引き締めた。
「なぁに? いよいよメインコンピューターとご対面?」
「いや、環境庁の末端端末に入れるか?」
「環境庁?
アイシャはデジタルネットワークの世界をスイスイと移動する。
「見つけた! 入ったよ」
「アイシャ、そこに『聖者の行進』っていうプログラムはないか?」
「聖者の行進?」
アイシャは格段に大きなファイルを見上げた。
「ある。コピーする? ちょっと時間かかるけど」
「ああ。持って帰ってきてくれ」
慎重派のダンが危険を犯しても欲しがるファイル。よほど重要なものだと思われた。アイシャは慎重にコピーを作成した。
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