第5話 

 バラック小屋に戻った二人は薄暗い部屋の中、シングルベッドの上で本能を解き放ち激しい欲求をぶつけ合う。


 やがて訪れたまどろみから覚めたアイシャは、テーブルの上でカチャカチャと作業をするダンの背中に問いかけた。 


「今度は何を作っているの?」


「偵察機。さっきの廃棄、あたりパーツが結構落ちてきやがった」


「偵察機?」

 怪訝そうにアイシャは裸体を起こす。


「そう。これで上の奴らを偵察するんだ」

蜘蛛のような八脚のパーツにカメラのレンズが鎮座している。


「まぁ見てろ」

ダンが起動すると、偵察機は小屋を飛び出しヤモリのように壁を登っていく。


 やがて薄暗い部屋の中で青白い光を放つモニターに、タージマハルを彷彿とさせる白い町並みが映し出された。


「見えるか?」

 ダンは体をずらしてアイシャにモニターの画面を示した。


「これが壁の向こう側の世界だ」

 

「知ってる。2年前まではあたしも上にいたからね。とは言っても労働階級だけど」

 アイシャはうんざりするようにBWの街を睨みつけた。



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