第6話 最凶ハッカー

 

「AWに来てすぐに『moldカビ』と出会えたのは、俺にとって幸運ラッキーなことだった」

 思い返すようにダンは呟いた。


「その呼び方やめてよ。moldカビだなんて失礼だわ」

 アイシャはツンと鼻を突き上げた。


「天界人はそれだけお前のことを恐れていたんだ。いつの間にやら侵食されてプログラムを壊していく。侵入経路は特定できず、根絶の目処は立たない。狙われたら最後、為す術もない最凶ハッカー。コードネーム『moldカビ』」


「ふふん。そう聞くと悪い気はしないわね」

 アイシャは機嫌を直して微笑んだ。


「BWのSEシステムエンジニアをしていた頃は考えもしなかった。最凶ハッカーmoldが『シックス・センス』を使ってサイバー攻撃を仕掛けてきていたなんて。実際俺もこの目で見るまでは信じられなかったからな」


「私は意識を電波に乗せることができる。ただそれだけのことよ」


「それができる人間を、俺はお前以外に知らない。しかもお前は通信電波をジャックして、入り込んだプログラムを操作することができる」


「この力のせいでAWに落とされたんだけどね」


「だがその力のお陰でお前はシャットダウンしていた放射能処理施設のシステムを再起動し、生活環境を整えアングラを最大勢力にすることができた」


「まぁ、そうとも言えるわね」

アイシャは興味なさげに肩をすくめる。

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