第3話 AWで生きる人々
「おい、足元ゆるいぞ。気をつけろ」
ダンは前を走るルークに声をかけた。
「わかってる!」
身軽なルークはヒョイヒョイとゴミ山の上を越えていく。
ゴミが蓄積するとメタンガスが発生する。ガスが貯まれば足場が緩む。踏み込んで高熱のメタンガス噴射を喰らえば、人間の体など一瞬で消える。
歩くだけでも命がけなAWの人々にとって、天の門が開かれ廃棄物が落ちてくる時間は施しの時間でもあった。
AWは農作物が育つような環境ではない。ここに生きるものはBWから流れ込んでくるゴミで命をつなぐ。
不衛生な環境下、病を拾えば治すすべなどない。まさに「
「またそんな変なもんばっか拾って! 食えるもんを探せって言ってんだろ?」
電子部品を拾って歩くダンに、ルークは苦言を呈した。
「いいんだよ。お宝は人それぞれだ」
ダンは腰を伸ばして空を見上げた。
青い空に伸びた長いアームの先から、吹き出すように廃棄物が流し込まれている。
悪臭には慣れた。悪意には慣れない。
ダンは天の門を振り仰ぐと、伸び切った前髪の奥から獣のような目をギラつかせた。
「アイシャだ!」
ルークが近づいてくる遠影を見つけて手を振った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます