ポイント?なんだそれ?~中堅冒険者の俺、ステータスが強化できることを知って無双!
青猫
ポイント?なんだそれ?~中堅冒険者の俺、ステータスが強化できることを知って無双!~
「ホブゴブリンの討伐、ありがとうございました!」
いつも通りの報酬を貰い、ギルドを去る。
そして、いつもの宿でご飯を食べ、寝る。
——それが俺の日常だ。
俺はユシャ。しがない冒険者だ。
どれくらいしがないかっつーと、まぁ、クエストで手に入れた金でなんとか一日一日を生きているぐらいしがない。
それもこれも、俺に才能がないせいだ。
俺は、宿の自分の部屋で自分のステータスカードを確認する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ユシャ 24 45
職業 勇者
STR 65
VIT 65
INT 62
RES 62
DEX 104
AGL 91
LUK 55
SKP 225
STP 450
スキル
武術 レベル6 魔術 レベル5 器用さ強化 レベル6 素早さ強化 レベル4
幸運
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おっ!一レベル上がってる!」
俺は少しだけ嬉しくなる。
レベルが上がれば、ステータスの値が増え、その分だけ強くなれる。
そういうシステムらしい。
……まぁ、書いてあることの大半は意味が分からないが。
なんだ、このSTRとかって?
まぁ、知らなくても、生きていけるから問題は無いのだが。
増えれば強くなる。俺にわかるのはそれだけだ。
俺の能力はだいぶ低い。
それこそ、中級のモンスターと言われているホブゴブリンぐらいの相手しかできないくらい。
俺の同世代だった奴は、もうみんなほとんどワイバーンとか、ドラゴンとかの上級のモンスターを倒せるようになってるのに。
ホント、才能って言うものを痛感してしまう。
「……明日も早い。今日も寝るか」
次の日の朝。
俺がいつも通りギルドに行くと、なにやら騒がしい。
「お願いします!俺たちをパーティに入れてください!」
見ると、俺と多分そこまで年の違わない青年とそれよりかは若そうな少女がどうやらパーティ関連でもめているらしかった。
「……いや、足手纏い二人はちょっと……。女の子の方だけだったら考えるんだけどさぁ」
そう言って、やらしい目線を少女に向ける男。
「っ!もういいです!」
青年は男に見切りをつけると、またきょろきょろとあたりを見回している。
俺は(大変そうだな)とは思いつつも、そのまま受付に向かう。
「いらっしゃいませ!……あぁ!ユシャさん!今日も同じクエストですか?」
「あぁ。よろしく頼む」
「わかりました!」
そう言って、受付の人が一旦書類を探しに裏に行ったところ、後ろの方から「おい!やめろよ!」という声が聞こえてきた。
振り向くと、どうやらさっきの男が少女に絡んでいるらしく、青年はそれを阻んでいた。
「は?うるせえよ」
男はそう言って青年を突き飛ばす。
青年は歳の割にあまり強くないようで、勢いよく突き飛ばされてしまった。
「ねぇ、お嬢ちゃん、俺たちとイイコトするんだったらお嬢ちゃんだけはパーティに入れてあげてもいいけどぉー?」
「……え、えっと、そのすいません!」
「はぁ?そんな事言わずにさぁ?」
男は少女の手首をつかんで無理やり連れていこうとしている。
「おい」
……さすがに看過できない。
「あ?なんだ?……なんだ、ユシャかよ?中級風情が、俺になんの用だ?」
「その手を放してやってくれよ。無理強いはダメだろ?」
俺がそう言うと、男は少女の手を離し、俺の胸倉をつかんできた。
「はぁ!?誰に向かって言ってるんだ!?俺はお前よりも上級の冒険者だぞ!?お前なんて、一ひねり……」
「はいはい、分かったから」
俺はその胸倉をつかむ手をぐるりとひねり上げる。
「痛たたたっ!」
男はパッと俺から距離を取る。
「ほんとに意味の分からん技を使いやがって、雑魚のくせに……」
男はあきらめたようで、ギルドを後にする。
俺は少し呆然としている少女に声を掛ける。
「ケガは無いか?」
「あ、あぁ、大丈夫、です……」
少し、頬を赤らめる少女。
そこに先ほど突き飛ばされた青年がやってくる。
青年は、「妹をありがとう」と頭を下げた。
「いや、構わないでくれ。俺が勝手にやったことだ」
俺は踵を返して、受付まで戻ろうとする。
すると、青年が「ちょっと待ってください!」と呼び止めてきた。
「私たちと、パーティを組んでくれませんか?」
一度受付の方で、受付の人に一旦依頼は保留する旨を伝え、俺たち三人は、ギルドに隣接する酒場に来た。
「……なるほど。母親が病気で……」
話を聞くと、青年の名前はカラ、少女の名前はミーネというらしく、二人は兄妹でどうやら彼らは母親の病気の治療をするための金を稼ぐために冒険者になったらしい。
「俺、もともと家業の農家をしていたんですが、その稼ぎじゃどうしても治療費が足りないらしくて……」
「そうか……」
そこまで言うと、カラは立ち上がり、頭を下げる。
「だから、どうかお願いします。俺たちとパーティを組んでくれませんか!?」
俺は顎に手を当てて考える。
「できれば受け入れてやりたいところだがな……問題がある」
カラとミーネはじっと俺を見ている。
「……俺じゃ、力不足だってことだ」
俺は二人に俺の現状を伝える。
俺がそこまで強くないこと。
俺の稼ぎは数日分の宿代ぐらいにしかならないこと。
正直、手伝いたいが俺では力になれないこと。
「そういう事だ。……他を当たってくれないか?」
「「……」」
二人は黙りこむ。
「悪かったな。これで飲んだ分は払っておいてくれ」
俺は、三人分の飲み物の代金をテーブルの上にのせて、その場を後にしようとする。
「……ま、待ってください!」
しかし、ミーネがそれを呼び止めた。
俺は、立ち止まり、振り返る。
「あの、それなら、私たちを鍛えていただけませんか?」
ミーネは、意を決した表情で話す。
「その、ギルドの人たち皆にお願いして、ダメだったんです。でも、あなただけは話を聞いてくれて……。虫の良いことを言っているのは分かってます。でも、お返しも必ずします!だから、私たちに戦い方を教えてください!」
「……いいのか?俺はそんなに強くないぞ?」
ミーネは首を横に振る。
「あなたがさっき見せたあの動きと周りの反応が少し気になって……もしかしたらって!」
俺はじっと考える。
そして結論を出した。
「……分かった。戦い方なら少しは教えられる」
俺がそう言うと、二人は「やった!」と跳んで喜んだ。
……まぁ、彼らがとりあえず食うに困らない程度ならできるか。
そして、俺たちは酒場から移動して、ギルドの受付に来ていた。
先ほどの受付の人に、彼らとパーティを組むことを告げる。
受付の人は、驚いていた。
「ユシャさんがパーティを組むなんて、珍しいですね!」
二人はそれを聞いて、不思議そうに俺を見る。
「誰かとパーティを組んでないんですか?」
「あ?……あぁ。俺、昔パーティから追い出されたんだ。弱いから」
俺はあっけらかんと答える。
「え!?そうなんですか!?」
二人は驚いているみたいだ。
「まぁ、大分昔の事だし、俺も納得してるからな。それじゃ、ゴブリンのクエストを持ってきてくれ」
「わかりました!」
受付の人は、さっと裏手に行って、ゴブリンの依頼書を持ってくる。
「まぁ、ゴブリンなら下手を打つことはまずないだろう。これで戦い方を教える」
「「わかりました!」」
俺がそう言うと、カラが思い出したように、ステータスカードを取り出し、俺に渡そうとする。
「いや、見せなくていい」
しかし、俺はその申し出を断った。
「いいか?ステータスっていうのは、他人に見せちゃいけない。自分の情報は、きちんと隠すもんだ。ギルドの講習で教わっただろ?」
「はい、ですけど、きちんと実力を把握してもらわないと……」
「そのためにゴブリン討伐に行くんだ。大丈夫」
そして、俺たちはゴブリンの巣に到着した。
目の前には、ちょうどよくゴブリンが一体いる。
「よし。とりあえず、どっちか戦ってみてくれ。負けそうなときは俺が助ける」
そう言うと、ミーネが「私が行きます!」と前に一歩踏み出した。
カラは慌てて「俺も!」と一歩踏み出す。
「今回はミーネが先に出たからミーネを先にしよう」
「でも……」
「……兄さま、私もやれるから!」
「……分かった」
ミーネがそう言うと、カラもしぶしぶ納得したようで、一歩下がった。
ミーネは手持ちの槍を構え、ゴブリンに向かい合う。
「……やぁっ!」
それからしばらくして、休憩をとることにした。
ミーネもカラも、筋は悪くない。
特にカラは、農家をやっていただけあって、筋がいい。
「これならきちんとスキルが取れれば、問題なく戦えるな!そのためにも、たくさんゴブリンを狩るぞ!」
「「はい!」」
二人は、凄くやる気に満ち溢れている。
やっぱり、母親に早く元気になってほしいのだろう。
「そう言えば、ギルドの講習で、戦術指南は受けなかったのか?」
ギルドでは、戦術指南と通常講習の二つが用意されている。通常講習は、無料で全冒険者が最初に受ける必要がある。一方で戦術指南は、受けるのにお金がかかるが、こっちは受けなくても問題ない。
「はい。戦術指南を受ける費用を出せなくて……」
「……そうか。俺は受けたが、上級の冒険者が直々に指導をしてくれて、凄く勉強になったことは覚えているぞ。まぁ、上級の冒険者を雇う為の費用が高いからかかなり金はかかったがな」
「そうなんですか……」
そこまで話すと俺は立ち上がった。
「それじゃあ、行こうか」
「「はい」」
しばらく歩くと、ちょうどいいところに槍を持ったゴブリンが一体いた。
俺は二人を止める。
「これから、俺があいつを倒すからそれを見ててくれ」
俺は愛用の剣を取り出し、ゴブリンに向けて構える。
「じゃあ行くからな」
そこまで言うと、俺はゴブリンに向かって駆けだす。
ゴブリンは向かってくる俺に気づいたようで、槍を構えて突き出してくる。
俺は、ギリギリまで槍の先端を見極めて、寸前で少し右にずれる。
ゴブリンは、当たったと思ったようで、一瞬にやりとしたが、しかしそれが外れたと気づいたときにはもう手遅れだった。
俺は一閃して、ゴブリンの首をはねる。
ゴブリンは、何も声を上げることなく、倒れた。
俺はさっと二人の方を振り返る。
「ま、ざっとこんな感じだ」
二人は言葉も出ないみたいだ。
「これは、ちょっと危険なレベルだが、もっと簡易的な物でも敵の意表を突くことは簡単にできる。まぁ、俺ほど強くなれない奴もまれだと思うから、この方法ならレベルをすぐに上げて強くなれるさ」
俺は二人の元に戻る。
「それじゃあ、特訓行くぞ。行けるか?」
「はいっ!」
ミーネが元気よく返事をする。
カラはちょっと不安そうにうなずく。
「俺にもできるのかな……」
「大丈夫。俺にできるんだから!」
その後、しばらく特訓すること数時間。
ミーネもカラも、だんだんとコツがつかめてきたようで、みるみるうちにゴブリンを倒すスピードが上がっていった。
……これなら、一週間ほどで中級に上がれるかもしれない!
それと同時に自分のうだつの上がらなさにため息が出た。
丁度その時。
二人が興奮した表情で戻ってきた。
「す、凄いですね!あっという間にこんなに戦えるようになるなんて!!」
「本当にありがとうございます!!」
「いや、それは君たちの努力の成果だ。俺は少し後押しをしたに過ぎないよ」
俺は自分の事を心にしまって笑顔で二人を迎え入れた。
「それじゃあ、そろそろ帰ろうか。もうそろそろ日も暮れることだし……!」
その時、二人の背後におかしな影が!
「二人とも前に跳べ!」
その言葉と同時に前に跳ぶミーネとカラ。
その直後、振り下ろされるこん棒。
俺はその振り下ろした一瞬のスキをついて相手の胸を一突きする。
一瞬は退く相手。しかし、すぐに体勢を取り戻してこん棒を振り回す。
「ちいっ!」
俺は一時後ろに下がり、魔法の準備をする。
「ファイヤーボール!」
そこそこの大きさの火弾が相手に直撃。
「ライトニングスピア!」
そこにさらに高速の連続攻撃を叩きこむ。
相手は悲鳴を上げ、地に伏せる。
「ま、魔法まで……」
「しかも2属性も……」
相手が全く動かなくなったのを確認して、首をはねる。
「よし。二人とも、ケガは無いか?」
「ええ、大丈夫です。でも……」
カラはじっとモンスターを見ている。
「こいつはホブゴブリンだな。でもこいつは奥の方の魔物で、出てこないはず」
……まずいな。
「急いで戻るぞ!」
「は、はいっ!?」
俺たちははホブゴブリンの死体を回収して、急いでその場をあとにした。
そして、急いで帰った先であるギルドにて。
「……なるほど。ゴブリンの大量発生の兆しが……」
普段奥から出るはずのないホブゴブリンの出現。
これの指すことはただ一つ。
ゴブリンのスタンピードだ。
「急いで、ギルドマスターに指示を仰ぎます。ですが……」
受付の人はギルド内を見渡す。
不幸にも、今現在強力な冒険者は出払っている。
ゴブリンのスタンピードの対処には上級以上の冒険者の力がいる。
俺の力じゃ、到底足りやしない。
どうすることもできない俺は、二人を連れてギルドを後にした。
俺たちは、無言のまま街を歩いている。
……このままだと、ゴブリンの群れは容易く街を襲うだろう。
そうなれば虐殺は免れない。
そんなどんよりとした思考に陥っているさなか、その場の気分を変えようとしたのかカラが明るげに言う。
「とりあえず、教会に行きませんか?少しでも強くなっておきたくて……」
「あ、あぁ?いいぞ。行こうか」
……神頼みか。悪くはないかもな。
そう思った俺は教会についていくことにした。
教会。
この世には、世界を作った一人の神様がいて、その人が世界のシステムを作ったらしい。
まぁ、俺は神様がいたとしても、神様には頼らず、自分の力で頑張ろうと思う人間なのだが……。
でも、やっぱり神様を信仰する人は多いみたいで、俺が昔、パーティを組んでいた時も、皆教会に足繫く通っていた。
熱心なことだなぁとは思いつつも、まぁ、とりあえず手を合わせるぐらいはしていたが。
そんなこんな考えていると、教会に到着した。
俺たちは教会に入る。
久しぶりに入った教会はどことなく不思議な雰囲気をたたえていた。
ミーネとカラは、一目散に像の前に立つと、お祈りをし始めた。
俺は見ているだけだ。
しばらくして、祈り終えた二人が戻ってきたが、俺を見て不思議そうな顔をしている。
「あれ?ユシャさん、ステータスポイントを割り振らないんですか?」
ミーネがそう言うと、カラが、
「ユシャさんはレベルが高いから、まだレベルが上がってないだけだろ」
とミーネに注意する。
……ステータスポイント?
「なんだそれ?」
「「えっ?」」
二人の声が静かな教会の中で響き渡る。
途端に、視線が俺たちに集まる。
「……いったん外に出て、話をしよう」
「で、ステータスポイントってなんだ?」
外に出た俺たちは、話の続きをする。
「ステータスポイントって、ほら、ステータスの「STP」っていうところですよ」
と、ステータスカードを指さすミーネ。
「……STPがその、ステータスポイントってやつか……それ以外はなんて意味なんだ?」
「え……ギルドの講習でやりませんでしたか?」
その一言に俺は頭を掻いた。
「……その時は寝てたんだ。どうしても話聞くだけって瞼が重くなっちまって。だから、ステータスの事についてはほとんどわからないんだ。その数値が何を指しているのとか」
その一言で二人は静かになった。
「え、でも、講習の先生は、『ステータスポイントは割り振らないと、それこそ初球の冒険者にすらステータスで劣るから、絶対に振るのを忘れるな』って……」
「あぁ……だから皆あっという間に俺より強くなったのか」
「前のパーティの時に教会に行かなかったんですか!?」
「その時は、なんて信心深いんだろうなって思ってたよ」
「「……」」
二人とも、無言になってしまった。
「それじゃあ、一つ一つ教えていきますから、聞いていてくださいね」
——それから数分後。
「なるほど!そんなに便利なシステムがあったとは!」
なんと驚くべきことに、ステータスにあったSTPとは、ステータスに割り振れるポイントだったらしい。1ポイントで一つの数値を1上昇させられる。
しかも、もう一つ、SKPというのは、スキルを強化したり習得したりできるポイントだったらしい。
普通の冒険者は、このポイントで、「槍術」や「剣術」といった武器スキルや、職業専用のスキルや、「身体強化」スキルと言ったスキルを上昇させたりするらしい。
ちなみに、能力の強化は、すべて教会の像にそういったお願いをすることでできたらしい。
「はえ~知らなかった」
「それであそこまで強いなんて、凄いですよ……」
「それじゃあ、そのポイント?ってやつを振り分けてくる」
俺は少しウキウキしながら再度教会の中に入る。
そして一度ステータスカードを確認する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ユシャ 24 45
職業 勇者
STR 65
VIT 65
INT 62
RES 62
DEX 104
AGL 91
LUK 55
SKP 225
STP 450
スキル
武術 レベル6 魔術 レベル5 器用さ強化 レベル6 素早さ強化 レベル4
幸運
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……いや、まさかこれが使える要素だなんて思っても見なかった。
俺は神様の像に願いをささげる。
——ステータスを振り終える。
……いや、まさか、ここまで力がみなぎるとは……。
俺は、自分のステータスカードを再度確認する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ユシャ 24 45
職業 勇者
STR 600
VIT 600
INT 600
RES 600
DEX 600
AGL 600
LUK 100
SP 1
STP 0
スキル
武術 レベル10(+4) 魔術 レベル10(+5) 身体強化 レベル10(+5)
勇者の心得 仲間と共に
幸運
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
なんか、色々とスキルの効果とかがかみ合って、こうなった。
……これなら、もしかしたらスタンピードもいけるかもしれない!
俺は、急いで二人の所に向かう。
そして、「ギルドに行くぞ!」と言うと、三人で急いでギルドに走り出していった。
ギルドにつくと、根無し草の冒険者たちが、急ぎ足でギルドから出ていっている。
聞き耳を立てると、「もうこんな街にいられるか!」とか「さっさとずらかろう!」といった声が聞こえてくる。
俺たちはそんな人たちの真逆の方へ歩いていく。
そこには数人のこった冒険者たちと、落ち込む受付の人がいた。
俺は、受付の人に声を掛ける。
「おい、大丈夫か?」
すると、受付の人はすぐに顔を上げる。
「ユシャさん!?」
「……だいぶ出ていったな」
「……はい。スタンピードを抑えるには、洞窟の中のゴブリンを今殲滅できればいいんですけど、上級以上の冒険者がおらず、ほとんどの下級や中級の冒険者は逃げ出してしまって……」
「……それ、俺たちのパーティにやらせてくれないか?」
俺は受付に頼み込む。
「え!?でも、ユシャさんって中級が限界なんですよね!?それじゃあ、無理なんじゃ……」
「今はその時より十倍は強くなっている自信がある!」
「十、十倍!?突然ですね……」
「だから、俺にやらせてくれないか。俺だってこの街が襲われるのを黙ってみているわけにはいかない」
「……分かりました。そこまで言うなら、お願いしましょう……」
受付の人は、そっと紙を一枚取り出した。
「緊急の依頼です。洞窟の中にあふれるゴブリンを殲滅してください!」
俺はその依頼を受諾し、二人を連れて、洞窟へと向かった。
——道中。
不安そうなカラ。
「……俺たちがついてきてもよかったんですか?」
「あぁ。色々と都合もあるし、なにより、お前たちの勉強にもなる」
「そうですか……」
ミーネも緊張しているようで、ぎゅっと槍を握っている。
カラはそんなミーネを見て、肩を叩く。
「大丈夫。もしもの時は、兄ちゃんが守ってやる」
若干震えてはいるが、兄なりの意地だったのだろう。
「大丈夫だ。俺がお前らに傷一本も付けさせはしない」
……それができるくらいの力が溢れている。
いける。そんな気がする。
そして洞窟に着くと、もうすでにゴブリンたちが出始めていた。
「どうしましょう?もう溢れてきてますよ!?」
「大丈夫だ、まだ街に残っている奴らでも十分に対処できる。それに——」
俺は、慎重に詠唱を始める。
できるだけ広範囲に、高速で敵を仕留められる魔法を……。
「フリーズエリア!」
俺がそう唱えると、一瞬にして洞窟前の広場が凍り付く。
そこに立っていたはずのゴブリンたちも含めてだ。
……恐ろしく威力が上がっている。
これまでは、せいぜい数メートルを凍り付かせるレベルだったのに。
「す、凄い……」
「行くぞ」
俺は急いで洞窟の中に入る。そこにはうじゃうじゃとゴブリンの群れが。
「ここのエリアはゴブリンだけみたいだ。とりあえず、俺が魔法を打つから倒しきれなかった奴を頼む。できるな?」
「はい!」
「ゴブリンぐらいなら……」
その言葉を聞いた俺は、二人に向かってうなづき、詠唱を始めた。
「ウインドカッター!」
唱えた魔法は次々に相手を切り裂き、凄惨な光景を生み出している。
しかし、それでも倒しきれなかった数体の敵は、ミーネとカラが次々に倒していく。
さっき見たときよりも早く、洗練された動きに俺は唸る。
確かにステータスも上昇しているのかもしれないが、それよりも動きに無駄が少ない。
スキルだけじゃない。自分の技術も高めているな。
ゴブリンは全く手も足も出ずにやられていく。
そして、辺りのゴブリンを一掃すると、俺たちは奥に進む。
ここからは、ホブゴブリンやもしかしたらそれ以上の個体がいるかもしれない。
警戒しつつ、奥に進んでいく。
たまにはぐれてしまったのであろうホブゴブリンは、なんと一撃で倒せるようになった。
いやはや、ステータスとは凄いと思いつつ、さらに奥に進む。
最奥まで進むと、大量にホブゴブリンがいる部屋があった。
しかもその奥にホブゴブリンの上位個体。
「ゴブリンキング……」
俺は、奴らに気づかれないように二人に待機するように指示を出す。
「ここは俺がやる。二人は後方から敵が来ないかを見ててくれ」
「でも、この数……ユシャさんでもきついんじゃ?」
「問題ない、大丈夫だ」
そう言い残し、俺は奥に向かう。
今の二人の腕なら、ホブゴブリンでも倒せるだろう。
だから、俺は、目の前の敵を誰一人後ろに通さないことを意識する。
スキルポイントで強化したり手に入れたりしたスキル。
そのほとんどは、俺の地力、すなわちステータス恒常的にあげるものばかりであったが、これは違う。
「仲間と共に」。このスキルは、パーティを組んでいる時、一日一回十分だけ全ステータスを二倍にするというスキルだ。
このスキルなら、いける。
俺は、スキルを発動させた。
その瞬間、一瞬世界が遅くなる。
……いや、俺が早くなったのか。
時間にしてわずか一瞬。
そのスピードに慣れた俺は一気にかたをつけるべく、魔法を唱える。
「アッパーストーン!」
瞬間、大量の岩がホブゴブリンたちを突き上げ、一瞬にしてその命を奪う。
そして俺は、残りのホブゴブリンをあっという間に狩りつくし、ゴブリンキングと向かい合う。
「さぁ、終わらせようか」
ゴブリンキングはその手に持った巨大なこん棒を思いっきり振り下ろしてくる。
俺は、その大きなスイングをかいくぐって内側に入り。
その腹を切り裂いた。
汚い悲鳴をあげながら倒れ行くゴブリンキング。
俺は剣の血を払い、さやに納めた。
俺が二人の所に戻ると、二人はちょうどホブゴブリンを一体倒しているようだった。
大丈夫だとは思っていたけど凄いな……。
俺は、二人にスタンピードが解決したことを伝え、ギルドに戻ることにした。
ギルドでは、俺たちの報告を待ちながらも色々と対策を進めていたようで、俺達がゴブリンキングまで倒したことを告げると、凄く喜んでいた。
「本当にありがとうございます!それにしても、ユシャさんって強かったんですね!」
と受付の人が言うので、俺は「運が良かっただけですよ」と言っておいた。
まぁ、事実これを知らなかったらこのまま何もできずに死んでいた可能性だってあった。
俺は、しみじみと思った。
——今度から、説明はきちんと聞くことにしよう。と。
それからの俺たちは、結局パーティを組んだままになった。
偶然とはいえ、俺がここまで強くなれたのも、この二人のおかげだからだ。
俺が二人にスキルなしの技術、——というか、これ、俺以外にはできないやつなんだな―—
を教えつつ、三人で色々と探索していった結果、まぁ、晴れて三人とも、上級になることができた。そして、まぁ、色々あって。
——まさかカラの奴を「お兄ちゃん」なんて言う日が来ることなんて、その時の俺は想像もしていなかった。
ポイント?なんだそれ?~中堅冒険者の俺、ステータスが強化できることを知って無双! 青猫 @aoneko903
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