第42話

一輪の花が空中に浮き上がった。



それは舞の目の前をくるりと一回転し、そして髪飾りのようにつけられた。



「ふふっ。なにしてるのよ青っち」



声をかけると見えない両手に後から抱きしめられた。



青っちの匂いがして舞は大きく空気を吸い込む。



「会いたかった舞」



そんな声が後方から聞こえてくる。



聞き慣れた青っちの声だ。



「毎日来てるでしょう?」



舞は体を反転させて答える。



そしてなにもない空間に両手を伸ばした。



指先に肌の感触が触れる。



腹部あたりだろうか?



以前よりも筋肉がついて割れているのがわかった。



それで舞はまた笑ってしまった。



「透明病患者で青っちほど元気な患者はいないよ」



そう言い、見えない体に抱きついたのだった。




END

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いつかキミが消えたとしても 西羽咲 花月 @katsuki03

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