第10話 助けるぞ


ここに来てから1ヶ月は経っただろうか。


僕はいつも通りエルフさんの帰りを待っていた。


この生活をずっと続けている訳だが…なんというか…暇だ…とてつもなく。

おそらく暇をしないようにと置かれている玩具は精神年齢16歳の僕には興味が湧かない。


『ニャー⤵』(クッソ暇)


しょうがなく棚の上に上がり窓から街を見下ろすことにする。


この街はかなり大きいようで、大きな壁の中に建物がびっしり詰まっている。(進撃の■■みたい)

真ん中には城みたいなものがあり、ザ・ファンタジーってかんじだ。しかし、遠くには高層ビルみたいなものが見える。


(なんか不思議な場所だなー)


目線を下にすると街の様子が見えてくる。

目の前の道には多くエルフが歩いている。今日はいつもより多い気がする。


そんな賑やかな街をずっと眺めていると、周りとは明らかに違う一人の少女に目が留まった。


(僕と同じだ!)


その子には耳と尻尾がある。

見る感じ犬みたいだ。

しかしもう一つ周りとは違う点がある。それは、かわいいドレスを着ていることだ。


(なんでこんな下町に?)


明らかに場違いな彼女をずっと観察していると、周りを気にしながら僕から見て正面の路地に入っていった。


路地に入って何をするのだろうと凝視していたが、一瞬にして彼女は消えた。

いや、引きずり込まれた。横から手が伸びてきたのを僕は見逃がなかった。


(誘拐だ)


僕は彼女を助けるために窓から飛び出した。いや、飛び出していた。


気付いたら飛び出していたので、ここが2階ということにあとから思い出した。


猫の獣人だから平然と着地できていた。


(自分でやったことだけどビビった。そんなことよりも早く助けなきゃ)


着地の態勢から急いで路地に入ると、引き込まれたと思われる小路をゆっくり覗く。

そこにはやはり少女を脇に抱えた人がいた。


僕は猛ダッシュでその人に近づいた。

ここで気づいたことだが、どうやらこの身体は走ってる時に音が出ないようだ。

そのおかげで気づかれずに犯人の真後ろまでこれた。(てか、足も早いな)


『ミャーー!!』(くらえ!)


僕は走ってる勢いのまま犯人にドロップキックをくらわせた。


「ぐわぁっ!」


犯人は吹っ飛び壁に叩きつけられる。

これは完全にどこかしら折れてるだろう。


(あれ?女の子は?)


どこに行ったのかと周りを見渡すと


(あっ。上か)


見失った女の子が落ちてきていた。

『ウミャ』(オイッショ)


少女をキャッチした僕はすぐにその場を離れた。


────

──


安全な路地に着いた僕と女の子はベンチに座っていた。


「ーーー。ーーーーー」

女の子は僕に頭を下げ礼をしている。


『ミャミャ。ミャミ』(どういたしまして。なんて言ってるか分からんけど)てか、礼の文化は日本と一緒なんだな。


「ーーーーー…」


(う~ん。なんて言ってるか分からないな)


僕は女の子の意志をどうにか理解しようと表情やジェスチャーを見ているがさっぱりわからない。


しばらく話をしていると、ベンチに二人の男が近付いてきた。


追手か!と思ったが、女の子と親しげに話しているのを見ると安心した。


「ーーーー。ーーー」


女の子はまた僕に礼をすると二人の男と共に帰っていった。




(さて、帰るか…)


ベンチから立ち上がった僕はあることに気付く。


(あれ…ここどこ?)


勢いのまま飛び出しできたから自分がとこからきたかもわからないし、まず土地勘がない。


「ーー。ーーーーー」


するとどこからか見に覚えのある声が聞こえた。


「ーーーー。ーーーー」


どうやらいつもお店に来るおじさん達のようだ。

お酒を飲んでどんちゃん騒ぎしている時とは違い、なんか優しそうな人だ。

おじさんはキョロキョロと周りを見ると、ある女性を呼び何かを話している。


しばらくすると呼ばれた女性が僕に手を伸ばしてきた。おじさんは僕が帰れなくなってると理解して、女性に助けを求めてくれたらしい。


そして僕は無事元の場所へと戻れた。

日はもう沈みかけており、そろそろエルフさんが帰ってくる頃だ。

外に出たと気付かれないように僕は建物の壁を登り窓から部屋へ入った。




🐾🐾





「お兄様〜。どこですの〜」


彼女は獣人族の令嬢ステラ・ペトラ・スキロス

父の仕事のため生まれの地を離れエルフの国アウラー王国の王都シュンフォニアに移住していた。


そんな彼女だが、兄との街観光中迷子になっていた。


「こんなことならワガママ言って街に来なければ良かっわ」


後悔をしながらステラは兄を探すためそこら中をウロウロしている。そして、ある路地にはいる。

その瞬間右から急に手が伸びて来たと思った瞬間その手に身体を引っ張られた。


「キャッ」


彼女の身体は軽くすぐに手の主の元に抱えられる。


ステラはあまりの出来事に叫ぶことも暴れる事もできずにいた。


するとどこからか『ミャーー!!』と声がすると、次の瞬間私は宙に浮いていた。


「えっ?」


かなり飛ばされた物はもちろん落下する訳であって私は自然落下をはじめていた。


「キャーー!」


ここでやっと声が出た。


私は恐怖で目をいっぱい瞑る。しかし、地面に叩きつけられることはなく、優しく誰かにキャッチしてもらった。


確かめるために強く瞑った目をゆっくり開けると、そこにはネコ耳族の女の子が居た。


────

──


あの後ネコ耳族の娘に連れられある路地のベンチに二人で座っていた。


「ありがとうございます。どうお返ししたら…」


私は彼女に深くお礼した。


『ミャミャ。ミャミ』


「ミャミャ?えっ…えっと…なんと仰ってますの?」


『ミャミャ!』


「あっ。もしかして…」


私はある一つの病気を思い出した。


【獣語病】


そのような病気の名前を聞いた事がある。

でもつい最近出てきた病気で内容はまだ知らない。


「わかりました!私。あなたの病気を治してあげますわ。それでお返しさせて下さいまし」


『みゃっみゃ』


そんな話をしていると聞き覚えのある声がどこからか聞こえた。


「エリー!」


「お兄様!」


ステラの二人の兄は猛ダッシュでこちらに向かってきた。


「エリー。もう会えないかと」

と高身長で顔全体のバランスが整っている外見完璧の青年ロレン・ネロ・スキロスがステラの手を握りながら安堵した。


「エリー…よかった…」

と身長はそこまで高くないが、ロレンと同じく顔が整ったアルバート・フロガ・スキロスが息を切らしながらホッとしていた。


「お兄様達。ごめんなさい」


ロレン「エリーが無事で良かったよ」


アルバート「さぁ。そろそろ帰らないとお父様に怒られてしまうよ」


ステラは二人の兄と手をつなぎベンチから立ち上がる。


「あっ。待って下さい」

二人の手を一旦離す


「今日は本当に助けてくださりありがとうございます。いつかお返しを絶対します」


一礼を終えると再び兄と手をつなぎステラ達は帰っていった。




🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾

『にゃーにゃにゃみゃ。にゃーみゃーみみみゃー。』(いつもお読みいただきありがとうございます。モチベーション向上のため『いいね♥』や『フォロー』おねがいします)

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