第9話 働くぞ

ミヤコを保護してから1ヶ月が経とうとしている。


(今日の任務は何にしよう…)


冒険者ギルド【ミーロス】に来た私は今日も依頼掲示板に目を通す。


「やぁ。メアリーさん。最近毎日来ているようだが長期クエストはやらないのかい?」


いつも掲示板の近くに座り冒険者の行動を無駄に把握している小太りのおじさんがメアリーに話をかけた。だが、メアリーはそれに気づかない様子で掲示板をずっと見ている。


「前はよく一週間とか一ヶ月とかかかるクエストに出てたのに、最近は一日で終わるクエストばかりじゃないか」


「やめときな爺さん。きっと恋人でもできたんだろ」

おじさんと同じテーブルにいる中年の男性が話に入ってきた。


「んなわけないだろ。だってあの律義者のメアリーだぞ」


「じゃあ聞いてみるのが一番だな」

「おっおい」


「メアリーさん」


中年の男性が名前を呼ぶとさっきまで険しい顔で集中していたメアリーはビックリした顔で呼ばれた方を見た。


「なっ。なんだ?」


「メアリーさん。もしかして大切な人でもできました?」

「おまっ。何を直に…」

おじさんが止めに入るがすでに遅し。メアリーの長い耳にはもうその質問は届いていた。


「えっ。あーっ。」///


しかしメアリーは、みんなの思っていた反応とは全く違う反応を見せた。


「済まない。失礼する」///


顔を赤らめたメアリーは小走りで受付に逃げていった。


なんやかんやでギルド中が気になっていた話の結果に皆が一瞬静かになると驚いた声がギルド中に響いた。


『ええええええ!!!』



メアリー(まさかミヤコのことを聞かれるとはな。やっぱり人の生活の変化って周りにバレるものなのか)


私は思い出してしまったミヤコのかわいい姿に顔を赤くしながら受付に向かっていた。


「こっ…これを頼む」


レセ「はっ。はい」


この今の顔をバレたくない私は受付嬢の【セレシオ】に依頼の紙を渡し、すぐにクエストに向かうことにした。


────

──


冒険者ランク"A"の私が今回選んだクエストはもちろん……


近郊で採れる『ポリゴヌム』(炎症を抑えてくれる薬草)の採取クエストだ。


もちろんミヤコのために稼ぎたいのも山々だが、稼げる長期クエストに出てしまうと絶対ミヤコは寂しがってしまう。そんなことできない。


ということでここ最近は一日で終わるクエストのみをやっている。


っと、急がないとミヤコが寂しさのあまり泣き出してしまう。早く帰らねば。


シュパパパパパ…(目に見えない速さで薬草を採る音)



ミヤコの元へ早く戻りたいメアリーはダッシュで冒険者ギルドへ戻ってきた。


メアリー「換金を頼む」


ドサッ


袋パンパンに詰まったボリゴヌムが受付嬢の前へ置かれる。


セレシオ「お、お疲れ様です。少々お待ち下さい」


受付嬢のセレシオは驚いているような呆れているような顔で袋を持ちカウンターの後ろの部屋へ入っていった。

セレシオが驚くのは必至だ。なぜならメアリーはもう既に今日は10個クエストを熟している。

すべて近郊のクエストであるが、通常一日中かけて達成するものを彼女は1時間以内で終わらせてくるのだ。


日も落ち、クエストの報酬を貰ったメアリーは普段は見せない笑顔でギルドをあとにする。その時、ギルドの皆は同じことを思った。



『彼氏パワースゲ~』



────

──


「ミヤコただいまぁ~」


宿へ戻りミヤコ(動力源)に抱きつく。ミヤコはなんの抵抗もなく抱かれる。


1分後やっとミヤコから離れた私はすぐにミヤコを連れ一階の酒場へ向う。



「来たわね。今日は一段と忙しいわよ」


酒屋に来るとクレアさんが忙しそうにあちこちを小走りで働いている。


制服に着替えさせたミヤコを洗い場(定位置)に連れ、すぐに私はクレアさんの手伝いへ向かった。


今日は普段とは比べ物にならない忙しさだ。

どうやら話を聞くにみんな明日から行われる祭り目当てで来た観光客がほとんどらしい。


首都シュンフォニアの一大行事【アルケー祭】このテオロデー大陸の誕生を祝う祭りだ。


大陸のあちこちから人が集まる。


通りで最近色んな種族を見るわけだ。


そんなことを考えていると、私とクレアさんでは捌ききれないほどの注文数になってきてしまった。


カウンターには完成した料理が運ばれるのを待っている。(てか、料理しながら配膳もするクレアさんヤバくね)


両手にお盆を持ち次の人への配膳をしていると、足元の方でちょこまか動く影が見えた。

何かと思い後ろを振り向くとそこには何故かミヤコがいた。


ミヤコは慎重に料理を運んでいる。


また、ミヤコは成長したようだ。あんなに人前へ出たがらなかった子が、今はお客さんへ料理を運ぶまでに!


(ミヤコも頑張ってるんだから私も!)


────

──


ミヤコに勇気付けられ何とか今日の仕事を終えられた。


「ミヤコ〜。ありがとう!」


今日は寝落ちするまでミヤコを褒めた。




🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾

『にゃーにゃにゃみゃ。にゃーみゃーみみみゃー。』(いつもお読みいただきありがとうございます。モチベーション向上のため『いいね♥』や『フォロー』おねがいします)

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