007

 校長室から戻った3人と破壊。

 午後の授業には途中からの参加となるが、身が入るわけも無し。

 興味深い話し相手ができたのだから。

 

「なあ、妖精ってどれくらいいるんだ?」

「うーん、分かんないな。増える前は千とかそこらだったと思うけど。今はもう……すんごい数だよ」

 

 最初の子供が寄生されてから10年と少し。

 その間で妖精は爆発的に増えた。

 1人の子供から数十にも増えるらしいから、もしかしたら人の数よりも多いのかもしれない。

 

「てことは、いまも近くに他の妖精が居たりする?」

「居なくはないけど、多くもないよ。私たちは森とか廃墟とか、あんまり人が居ないところに棲んでるから」

 

 これは破壊の個人的な考えだそうだが、人の街は踏み潰されたり車にぶつかったりと、少し怖いらしい。

 でも商店街など、食べ物が集まっているところにはよく足を運ぶというか、羽を羽ばたかせていたらしい。

 

「ちょっとだけ分けてもらうのが毎日の楽しみだったんだー!」

「いや、それ分けてもらってるんじゃなくて盗んでるの間違いだろ?」

「そ、そんなことないよ!少し、ほんの少しだけかじるだけだし!」

 

 やっぱり盗んでるんじゃないか。やってることが野良猫やネズミと同じだな。

 

「その泥棒癖を直したほうがいいよってのは置いといて、俺とポピーを守ってどうするの?」

「ん?どうするって、何が?」

「いやだってさ、仲間を裏切るってことだろ?俺たちとしてはありがたいけど、いいの?」

「ああ、そういうことね。それはいいの。もう覚悟は決まってるし、そもそも他の妖精を仲間なんて思ってないから」

 

 なんだか随分と薄情な。

 それかあれかな。妖精たちは人間とは考え方が違うとか。

 でもま、闇深そうだし聞かないでおこう。

 

「~♪」

「あ、終わった。次体育だけど、破壊も来るの?」

「もちろん!しっかり見守ってなきゃいけないからね!」

 

 しっかりどこでも守ってくれている、らしい。

 それは本当にありがたい。ありがたいが……

 

「ねえ、着替え中なんだけど?」

「え?ああうん。そうだね?」

「いや、君女の子なんでしょ?ポピーのところに行きなよ」

「ううん。私たちに性別は無いよ。私、って言ってるのはただの気分だから。嫌なら変えようか?」

「そう、なんだ。まあそれならそのままでいいよ」

 

 破壊は女の子では無い。

 本人がそう言うのだからそうなんだろうけど、やっぱり気になりはするよなぁ。

 

「おーいブルーデイジー。さっさと行くぞ!」

「はいはい、今行くよ」

 

 俺はバッと体操服に着替え、廊下を走って行った。

 

 

「さあ皆さん、今年も体育は私が受け持つよ!今日は簡単な挨拶だけだから――」

 

 なんだ。運動したりするわけじゃないのか。

 じゃあ何故体操服に着替えさせられたのか。

 学校ってたまによく分からないことさせるの何だろうね。

 

「なあ破壊。お前の魔法見せてくれよ」

 

 暇な時間に耐えられなくなったのだろう。

 アルスがちょっかいをかけだした。

 だが俺も気になっていたからな、止めたりしない。

 

「いいけど、壊す事しか出来ないよ?だってさ」

「壊すだけね、何でも壊せんの?例えば、この石とか」

 

 アルスが石を掴んだ途端、それは粉々に砕け散る。

 

「お、おーう。すげえ」

「凄いか、ありがと。でも何の役にも立たないよ。ただ壊すだけ。私は厄介者さ」

 

 破壊の表情は分からないが、声の感じからして自暴自棄になってる人みたいな。

 過去になにかあったのだろうか。本当に闇が深そうだ。

 

 その日の最後の授業は破壊の魔法を試すことに費やされた。

 そこでその魔法の性質、破壊するには固体である必要があるということが分かった。

 今まで確認されてこなかった魔法。

 まだまだ発見が多そうだ。

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