007.1

 

 男は薄いファイルに目を通す。

 送り主はジェイダン・擬宝珠ギボウシ

 レボルフたちが通う関東学園の校長その人だ。

 

「ふむ。妖精か」

 

 男が突然そのようなことを呟いたため、同室の仕事仲間と思しき者たちから視線が注がれた。

 

「ああいや、気にしないでくれ。少し興味深い資料を読んでいただけなんだ」

「興味深い?そんな空想上の生き物がか?」

 

 確かにそうだ。

 その男も、いくら華族の大先生からのものであっても半信半疑。

 むしろ歳でボケたのかなんて思ったりもしている。絶対に口には出せないが。

 

「お前も読んでみるか?もし本当のことなら大ニュースになる情報だぞ」

「大ニュースねぇ……もう誰それが死んだとか、何処そこでテロがとか、そんなのじゃ少しも驚けなくなっちまったよ」

「違いない。でもこれは、おそらくどの国も知らない。もし流れていたとしても噂程度。

 それくらい眉唾物に近しいものだってことだ」

 

 男はデスクから退き、もう1人に座るよう促す。

 

「どれどれ。お前がそこまで言うなら見てやろう」

 

 もう1人の男は初めはおちゃらけた感じだったが、資料を読み進めているうちに顔つきが変わった。

 

「おい、おいおいおい!これ、とんでもない情報じゃねえか!」

「大ニュースだって言ったろ?でもま、本当のことだったらだけどな」

「それはそうだが、確認するべきだろ!一体誰からの報告なんだ?」

「ああ、それは――」

 

 その男の言葉は最後まで発せられることはなく、入ってきた女の言葉に遮られた。

 

「何してるんですか?サボってないで仕事してくださいね」

「別にサボってたわけじゃねえよ。なあ」

「ああ。そうだ所長、関東学園って近々生徒たちの健康診断がありましたよね?」

「そうですね。3日後に行くつもりですけど、それが?」

「この資料のことですよ。至急確認すべきことだと思いましたので」

「ん?……これは、なるほど」

 

 とある研究所に送られた資料。

 それはこうして徐々に広がってゆく。

 魔法に魔法使い。そして妖精。

 10年以上も明かされることのなかった真実に世界が気づき始める。

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