第3話
「キシュ! キシュ! キシュ! キシュ!」
アリのような気色悪い外見のモンスターは、綺麗に列をなして壁沿いを進んでいく。そして、
めちょ。 ねちょ。 ぬちょ。 むちょ。
壁きわに倒れている
いや……これ、無理なんで無いかい?
俺一人でどうこうできる敵では無いんでは無いかい??
めちょ。 ねちょ。 ぬちょ。 むちょ。
そうこうしているうちに、アリの化物はつぎつぎと
「キシュ! キシュ! キシュ! キシュ!」
手持ち無沙汰になったアリたちは、標的を変えた。
そう。俺だ。
アリたちは、強靭なアゴを鳴らしながら、俺に向かってくる。
その数は、20匹を軽く超えている。
これはダメだろう、流石にゲームオーバーだろう。
こんな大量なモンスター、俺ひとりでどうやって倒せば良いんだよ??
ええい! もうヤケクソだ!
俺は、メダルの妖精から受け取った『メダルスレイヤー』を、隊列を組んで歩くアリの化け物に思いっきり振り下ろす。
ブオォォォォォォォォン!
めちょ。
グレーの刀身をしていた『メダルスレイヤー』は、まるでレーザーサーベルのように白く輝くと、鋼鉄のような身体をしたアリのバケモノをいとも簡単に真っ二つにした。
ブオォン! ブオォン! ブオォン! ブオォン!
めちょ。 ねちょ。 ぬちょ。 むちょ。
すごい! この武器、めちゃくちゃ強い!
俺のデタラメな斬撃でも、アリのバケモノはまるで豆腐のようにいとも簡単にボロボロと切り刻まれていく。
そして、倒したアリからは、キラリンと見慣れた光が輝いている。
背中から、再び
いや、
「モンスターを倒すと、メダルを落とすよ!
メダルを集めると、さらに強力なアイテムがゲットできるから、ガンガン倒して、ジャンジャン集めてね♪」
「わかった!」
俺は、再び現れたメダルの妖精に言われるがまま、アリのバケモノを切り刻んで、落としたメダルを集めていく。
アリのバケモノ1体からは、3〜5枚のメダルが落ちるから、アリを全滅させたら100枚ちょっとのメダルをゲットできる計算だ。
これって無双ってやつ?
俺は、まるで戦国武将や三国志の武将をあやつるゲームのプレイヤーキャラになった心地で、ザクザクとアリのバケモノを倒していく。
ああ、気持ちいい! 無抵抗の雑魚敵をいたぶるのって、なんて気持ちがいいんだ!
俺に敵わないと悟ったアリのバケモノたちは、文字通り蜘蛛の子をちらしたみたいに逃げはじめた。
「逃すかよ!!」
ブオォン! ブオォン! ブオォン! ブオォン!
めちょ。 ねちょ。 ぬちょ。 むちょ。
ああ、気持ちいい! 特別な力を持つって、こんな気分なんだ。
俺は、なんとも心地よい全能感に浸って、逃げ惑うアリンコどもを切り刻んだ。
「よし! 最後の一匹! 思いっきりぶっ潰してやる!」
俺が『メダルスレイヤー』を大きく振りかぶったそのときだった。
「お、重い!」
『メダルスレイヤー』が、突然、鉛のように重くなった。支えきれなくなった俺は、たまらず手をはなしてしまう。
ズシん!
『メダルスレイヤー』が地面に落下すると、衝撃で地面が揺れた。
ミシ……ミシ……。
そして、金属製の床にガッツリとめり込んでいる。
え? どういうこと??
「あーあ。無双タイム終了だね。ざーんねん♪」
「どういうことだ?」
「君、さっき死んだお友達のメダルをゲットしたでしょ? そのとき、なんか不思議な感覚がしなかった?」
「あ、ああ、なんだか身体の中に力が入り込んだような……」
「あれは、お友達の能力だよ♪ 出来立てホヤホヤのメダルは、死んだ人の残留思念が残っているの。それに触れることで、わずかな時間だけ、その能力を継承することができるんだ♪」
「じゃあ、さっきまで『メダルスレイヤー』を振り回せたのは……」
「そ♪
なんてこった!
俺は、地面に半分埋まった『メダルスレイヤー』を再び持とうとした。でも、ピクリとも動かない。
「バカだねー。能力が発動している間に、敵を全滅させちゃえばよかったのに。ビビって時間を無駄にしちゃったから、大ピンチだねー。んふ、うふふふ♪」
ちっちゃなメダルの妖精カノトは、目を細めてニマニマと笑っている。
そして、その背後には……
「キシュ! キシュ! キシュ! キシュ!」
アリのバケモノが俺めがけて突っ込んできた。
あ、俺、死んだわ。
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