“なろう系”は作家性を求めない
“なろう系”ではあまり文章表現が好まれない。
近年は落ち着きを見せつつあるが、それでも未だに心情表現よりも外観やステータスといったものを重視する。
ここが最大の特徴として扱われやすく、批判されやすいところである。
おそらく前項の三要素を使ってもこの辺りがなければ“なろう系”と扱われないだろう。
何故そうなるのだろうか。
これは存外難しい事ではない。
それは現在読書事情が大きく絡んでいる。
文部科学省の出した統計によると高校生までの読書習慣は平成34年時点で26%であり、理由は読む時間の減少が64.5%と高い、
その数も中学生まで読んでいた層が多く、高校以降、様々な事情の変化で時間が足りなくなったから、というものが強い。
様々な情報量が増えていく高校以降それらに時間が分散してしまい、読書に時間を使えなくった、という層は多い。
これは大学、社会人からも多くなっていく、というのは肌感覚で理解できる人は少なくなかろう。
小説に時間を割くことが出来なくなっているようになっていくのだ。
そのため小説に求められるのは想像を掻き立てられるような文章表現などではなく、少しでも時間を使わずに読めるものなのだ。言い換えればストレスフリーな作風を好む層が出てくる。
そこにステータスや外見といったイメージしやすい情報が揃っている“なろう系”はまさに合致する。ステータスや外見、といったおおよそ小説を読む層からバカにされがちな要素も、読者層によっては想像したいことだけを簡潔に纏められているもの、となるのである。
また、現在多くのアニメーションが世間を圧倒している現状を忘れてはならない。
アニメーションを見慣れた人々にとってキャラクターが動く姿を想像するのは難しい事ではない。それは既存の作品を見続けてきた事による模倣のその反復が多く行われているためであり、文章に含みを持たせるよりもイメージしやすい条件が整えば頭のなかでキャラクターが勝手に動いてくれるのだ。
細やかな文章表現などはむしろイメージの邪魔となり遠ざけられる傾向にある。
これが“なろう系”の特徴である。
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