第2話、療養休職2日目

抗うつ薬の副作用である眠気が強烈で

8時間も死んだように熟睡していた

こんな事は学生時代以来である


寝れるというのは脳細胞の経験不足で生体がストレスに病的に侵されていない状態である。自律神経が正常に働き副交感神経が優位になる時に睡眠導入されて眠れる

生体が活動していた時に枯渇したエネルギー補給をしているとも思われる

生の経験によるPTSDに罹患していない可能性もあるかもしれないと推論されるが

生体が活動している時に長期間にわたり晒されたストレスが蓄積されて

それが毒となり自立神経のバランスが崩れる

それがうつ病の特徴である睡眠が壊される要因だと考える

年を取れば蓄積された疲労は身体では休息で取れるが

脳細胞を蝕む精神的疲労は蓄積されていく

(人間には加齢により最終的に忘却できる安全装置は備わっているが)

精神的疲労は人生経験の疲労であり

起きた事象をそのまま捉えるわけではなく過去の経験した記憶に脚色される

出した感情は現実化しミラー効果により好ましくない方向へと転がり落ちていく

加齢により高齢者の睡眠時間が短くなっていくのは睡眠中に起きている

脳細胞への蓄積された疲労が刺激となり

その結果、短時間睡眠として表れるのかもしれないと考える


朝、ゴミ捨てで外に出た時は晴天であり寒さは多少薄らいでいた

初冬の青い空、気持ちの良い気候と鳥の囀り聲

私が小さな子供の時に見た懐かしい風景

自分は久しく空を見ていなかったと自覚している

私の自尊心は壊れて自己評価が極端に低い為に常に下を向いて歩いていた

街並みは昭和から令和に様変わりしたが朝の晴れた冬の寒さが

緩い空気感と共にゆったりとした平日の午前中と合い

空のほどよい白い雲が浮かぶ青さが郷愁を誘う

配送車を止めてコンビニの喫煙所で作業着姿で煙草を吸っている若い人や

背広姿で道路を歩いている人達を見た時に

私はこの世から隔離された感慨を覚えたが

自分が悲観的になっている事も自覚はしていた

今の私の仕事は休息を取って病気を治す事である

一瞬戸惑ったが私は今、病気療養中なので

まだ世間からドロップアウトしていない




先週まで仕事に行っている時は毎日が恐怖との闘いであり

今日は何が起きるのか何に巻き込まれるのか

朝起きた時から憂鬱で呼吸が溜息と呻き声に変わったいた状態

昨日漸く会社関係の嫌な事から解放されて精神科医から処方してもらった

抗うつ薬と睡眠薬のお陰で久しぶりに8時間熟睡できた

人間、眠れるという事はなんて幸せな事なのであろうか


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