第三章 8-2
翌朝、
今回はミストリアだけでなく彼女もまた、純白の
次第に人通りが減るに連れ、時代がかった建造物が目立つようになってきた。どうやら教国では、建築年数が古い建物ほど格式が高くなる傾向にあるようだ。
やがて、一行は目的地であるイクシュヴァーク家へと辿り着いた。遠方からでも年季が感じられたが、造りそのものは質実で頑強そうである。
邸宅に続く門の前では
駆け落ち同然で
事の成り行きを固唾を呑んで見守る彼女であったが、兵士が深々と頭を垂れると門は開き、拍子抜けするほどあっさりと中へ入ることが出来た。
そして、質素ながらも良く手入れがされた庭園を抜けると、邸宅の前にはラーマと同じ
あれがきっとラーマの父親なのだろう。名門クシャトリヤの当主というだけのことはあり、豊かな色彩で染められた
しかしながら、相変わらずラーマは物怖じせずに歩み寄る。そして、何かを言おうとした瞬間、父親は一歩前に足を踏み出すと、
「おわぁっ! 何をしやがる、このクソ親父っ!」
ラーマが
「黙れぇ、このバカ息子が! 次に姿を見せた時は斬ると言ったのを忘れたかっ! しかも、ミティラーの娘なんぞを連れてきおって!」
父親が憤怒の形相で一喝した。ミティラーとはシータの実家のことである。やはり、二人の仲をまだ許してはいないようだ。
「お待ち下さい、ダシャラタ様。天人地姫の
その言葉に父親、ダシャラタの動きが止まった。彼女たちが
「ミティラーの娘よ、貴様まで私を
彼女は内心、ダシャラタに対して尊敬の念を抱いた。さすがは唯一、ダイバ老師に異を唱える気骨の持ち主だけのことはある。恐らくは早々に、
一方、ラーマたちは承諾できぬようで、ダシャラタに対して反発する態度を示していた。このままでは自分のせいで親子喧嘩が始まってしまうと、堪らず彼女が正体を明かそうとしたとき、門番が慌てた様子で駆け込んできた。
「えぇい、後にしろ! 今はこのバカ息子どもを成敗するのが先だ!」
ダシャラタが衛士を怒鳴りつけるが、次の瞬間、
「あ、アナン老師! なぜ、貴方様がそのような真似を!?」
老師は立ち上がると、再度、彼女たちに深々と礼をして
しかし、それが自身ではなく、ミストリアへと向けられたものであることを、彼女は老師の身の
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