第三章 4-1
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「ところで、この子たちって
山道での遭遇より数えて三日目の朝、目前に
その問いに答えるものは誰もなく、高原に響くのは吹き抜ける
対象に触れることなくプラナを奪うという試みは、ミストリアによる治療を挟みながら、二体の
回復魔法はプラナの消耗にも効果があるようで――
それでも身体に掛かる負担は大きく、また彼女の方にも相当な負荷が生じるため、二巡目以降は十分な休養を取りながらとなった。
そして、幾つかの条件を付して試行した結果、この力の必要条件が判明した。それは対象の位置情報の正確な認識にあり、例えば物陰に隠れて姿が視えなくなったり、目を
一方で、対象を視認さえ出来れば、どんなに距離が離れていようとも行使が可能であった。
以上のことから、この力は
迂闊に相手の間合いに入り、攻撃の起点となる動作が始まってしまえば、仮に意識を失わせても勢いまでは止められず、良くて相討ち……最悪の場合は致命傷を負ってしまう。
とても不安定で、そして危険な力なのだ。それは諸刃の剣というだけではない。
伝家の宝刀という言葉があるように、真に必要な時までは抜くのを控え、いざ抜いたら確実に仕留めねばならない。そのためには
何とも矛盾した話である。しかし、武芸も魔法も本来はそういうものなのだ。彼女は
それにしても幾ら相手が魔物とはいえ、
近頃は鍛錬に明け暮れていたこともあり、彼女も当てられたように眠気が押し寄せてきた。
ミストリアは
規則正しく収縮と拡張を繰り返すそれは、まるで上等な
自然と二体の処遇について思いを巡らせていた。このまま生け捕りにして市場に流せば
しかし、この先も連れて行く訳にはいかない。曲がりなりにも二体は魔物であり、人に危害を加えぬ保証はないからだ。
正直、愛着がないと言えば嘘になる。
ミストリアが戻ったら森に帰そうと彼女は決意した。この先、二体がどうなるのかは分からない。呆気なく人に捕まり
もし後者であったのならば、少しだけ羨ましいとも思う。好きな相手と未来を紡いでいく……それは、今の自分にはとても難しいことだ。出来る理由よりも、出来ない理由の方が多すぎて、考えることすらも辞めてしまったことだ。
不意に、茂みの奥から微かに葉の
間もなく訪れる別れに、一抹の寂しさを抱きながら腰を上げようとした瞬間、こちらに向けて攻性魔法が放出されたことを感知した。
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