第三章 地姫

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 好きなもの。それはお姉ちゃん。


 私の自慢のお姉ちゃん。とても強くて、優しくて、いつも私を守ってくれる。


 深海の双璧そうへきと讃えられる私たち。だけど、本当のへきはお姉ちゃんだけ。


 へきは壁のことじゃない。へきとはあなの空いた宝玉のこと。


 昔、使者が璧と城を交換する約束をしたら、先に奪われそうになって持ち帰った。だから璧をまっとうする、すなわち完璧。


 お姉ちゃんは完璧な人。お父様にも認められた。この場所にいられるのもそのお陰。ずっとずっと一緒。私の大好きなお姉ちゃん。



 嫌いなもの。それはあの男。


 私の大切なものを消した男。あの場所もお父様も、そしてお姉ちゃんまでも。あの男だけは絶対に許さない。


 でも、お姉ちゃんと約束した。だからじっと我慢する。ずっとその時だけを待っている。


 待って待って、それでも待って。いつしか私を知る人は消え。


 待って待って、それでも待って。いつしか私を知る人は増え。


 待って待って、それでも待って。何もかも忘れても、その約束だけは覚えてる。


 約束を守る。だから守る。彼女らを守る。彼を守る。


 ……いや、彼は違う。彼は守らなくていい。彼はあの男。そうだ、私はあの男を許さない。



 好きなもの。それはお姉ちゃん。嫌いなもの。それはあの男。


 なのに二つは重なり合って、私のすぐ傍にいる。


 あれはどっち。私はどっち。




第三章 地姫

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