第一章 EP
-エピローグ-
ミストリアがその手を伸ばしてくる。地上の星は尚もこんな自分を見限らず、変わらぬ輝きを向けてくれる。
しかし、その手を掴んではいけない。その輝きは只人には決して手の届かぬもの……いや、届いてはならぬものだったのだ。自分にしか出来ないこと、それはこの手を掴まぬことだったのだ。
もっとずっとあなたと一緒にいたかった。
あなたと一緒にいられたら、あなたの輝きの下にいられたら、自分も何者かになれるんじゃないかと思ったの。
こんな自分でもあなたの輝きに照らされて、ほんの少しだけど輝けるんじゃないかって、そんな風に思えたの。
でも、それは駄目なの。あなたは強く美しく、そしてどこまでも気高くて……比類なき孤高の煌めきは、天下万民を等しく照らし、そして何人たりとて侵せない。
その輝きを曇らすもの、
彼女はミストリアの差し伸べた手を振り払うと、全身から、全精神から、最後の言葉を振り絞る。
「まったく、一緒にいたら命がいくつあっても足りないわ。後はあなた一人で行ってちょうだい」
それが彼女にとって精一杯の、愚かにも星の
ミストリアはその葛藤を察したかのように、これまでに幾度となく繰り返された光景を眺めるかのように、淡々と彼女に離別を告げた。
「じゃあ、ここでお別れね。さようなら、私の……ううん、レイネリア=レイ=ホーリーデイ」
そして、ミストリアは振り返らずに歩いていく。残された彼女はただ、黙ってその
これは、今はまだ何者でもない少女レイネリア=レイ=ホーリーデイと、伝説を生きる神々の忘れ形見ミストリア=シン=ジェイドロザリーが、秘匿された世界の果てに至るまでの物語である。
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