第一章 7-1
-7-
「うわぁ……これはまた、どれくらいの人がいるのかしら」
彼女にとっては二度目となる訪問であるが、帝都の南側に
帝国は質実剛健を
しかし、いま彼女の目に映るのは、まるで救国の英雄の凱旋を想起させるかのような、煌びやかな修飾が施された外壁と街道の両端を埋め尽くす無数の群衆であった。
それはミストリアの来訪を歓迎しているように観えた。帝国とはその拡大政策から対立する向きも強かったが、臣民の中には純粋に
純粋な戦力で
やがて、
御料車に施されていた
突然の事態に困惑する彼女を尻目に、サナリエル皇女は
ミストリア
それは相手の心を写す鏡となり、好意を寄せる者には祝福として、
しかし、それはミストリアや皇女だから出来る芸当であった。仮に彼女が表面上だけ真似たとて、そこまでの価値を示すことは出来ない。その領域に達するまで、果たしてどのくらいの時を要するのか、皆目検討も付かなかった。
そして、御料車が宮殿の門を通過すると、車両の壁は元へと戻り、ゆっくりと速度を落として停車する。やがて、扉が外側から開かれると、三人は皇女を先頭にして降車していった。
「遠路遥々、御身の
そこには文武百官を従えた
等しく後光が指すような重厚な存在感は、気を抜けば平伏してしまいそうになるほどに威厳に溢れており、宴席では
しかし、それにも増して過敏な反応を示したのは、ミストリアであった。皇帝へと向けられた表情は驚愕と狼狽に満ちており、あの美しい翡翠の瞳が濁りを帯びたかのように見開かれていた。
明らかに様子がおかしかった。如何に皇帝の面前といえど、帝国の全軍を相手取ることすら
やがて、臣下たちの間からは不快感を伴う咳払いが聴こえてくる。ミストリアが我に返ったように答礼を述べると、皇帝はただ満足そうに頷くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます