第一章 5-1
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「まさかとは思うけど……またなんてことはないよね」
彼女にとってはこれが二度目の入国となる。
今から
生憎と眺望よりも防備を重視した造りであり、外の景色を楽しむことは叶わなかったが、帝国領に入ったことだけはすぐに分かった。それは荒野の終わりに迎えの使者が来ていたからである。
しかし、返礼のために馬車を降りた一行は驚愕することとなる。素人目にも明らかな練度を誇る大隊規模の軍列……
皇女が使者に赴くなど公設の使節団は勿論、たとえ国王が相手でも考えられぬことである。しかし、皇女は王国側の動揺を意には介さず、案内役として帝都まで随伴することを申し出てきた。
そして、更に耳を疑ったのは、彼女に
御料車の中も外部と同様に豪華な装飾がされていたが、それほど大きな造りではないため、座席は一列分しか見受けられない。つまりは座れる場所は皇女の傍しかなく、彼女は恐る恐る隣へと腰掛けた。
そんな様子に皇女は満足そうに頷くと、
一瞬、不用心にも感じられたが、
しかし、なぜ自分に同乗を求めてきたのか。人質という線も考えられなくはないが、むしろこの状況では危惧すべきは帝国側である。
そうして思案に暮れていた彼女であったが、やがて隣席から射抜くような視線を感じ、慌てて
いと貴き御方の前で物思いに
「
皇女の話によると、迎えの使者は本人たっての希望であり、宮中でも反対する声が多数を占めたそうだ。しかし、最後には押し切る形で皇帝の
皇女とはこれが初対面のはずである。いったい何が皇女を
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