序章 2-2
前線で泡人形と兵士が
魔法を行使するためには、自然界に存在するマイナと術者本人に宿るプラナが必要とされている。魔法障壁に加えて多数の魔法人形を生み出したことで、大量のプラナを消耗したとも考えられるが、少なくとも疲弊した様子は認められなかった。
ミストリアの行動には不可解な点が多々あった。しかし、少し着眼点を変えてみると、一つの推測が垣間見えてくる。人的被害を最小限に抑えようとしているのではないか、と。
そうなると、地面に散らばる矢を撤去したことも、敢えて周辺環境には
不運にも騎兵同士の衝突で負傷者を出してしまっていたが、帝国の軍事演習では死者が出ることも珍しくないため、むしろその程度の被害は
それは同時に、両軍は明らかな手心を加えられても、なおミストリアに接近すらも叶わないことを示している。
両軍ともに防壁の全てを破壊するのではなく、空けた穴に戦力を集中させ、強引に押し進む戦術を
最深部へと到達したのは、帝国側はシバイ皇太子、王国側はモリヤ将軍、いずれも指揮官とその腹心からなる精鋭中の精鋭である。しかし、双方ともに別々の箇所からの突破を試みており、決して共闘しようとはしなかった。
両者ともどちらが先にミストリアの元へと辿り着き、その
今回の演習は
故に協力して事に当たることは出来ず、それが防壁の攻略に少なからぬ影響を与えていたのだが、ついに両軍の執念が実ったのか、最終防衛線を突破する者が現れた。
それは奇しくも両軍の指揮官であり、二人はミストリアに向けて気勢を放つと、前後からほぼ同時に斬り付けた。
両軍の総力を結集した攻撃が
ミストリアの周囲には、
幾多の部下の献身の末に放った
それは殺風景な荒野には似つかわしくなく、月光を浴びた湖水が如き金糸の髪に、
二人がその美貌に目を奪われていた一方、ミストリアもまた両者を観察していたが、やがて興味を失ったのか、
もはやこれ以上演習を続ける意味はない……その様な空気が荒野に漂い始めたとき、モリヤ将軍が憤怒の表情を浮かべながら
「貴様、なぜこれだけの力を持ちながら
その瞬間、まるで昼夜が逆転したかのように少女の纏う空気が変質した。
ゆっくりと
二人は気圧されるように後方へと飛び退いた。それは生存本能に根差した行動であり、よもやミストリアが王国の重鎮に手を掛けるとは考え難いが、そう思わせるだけの異様さが空間を支配していた。
「彼女に謝罪したまえ。先の発言は騎士として看過できるものではない」
皇太子は周囲を
「しかも、我が妃となるやも知れぬ貴人に対して何たる侮辱か! 重ねて述べるならば、貴国は決して属国などではあるまい」
そのあまりの剣幕にモリヤ将軍は我に返ると、
緊迫した事態が収まり、
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