序章 2-1
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帝国軍の火力を物ともせず、微動だにしなかったミストリアであったが、膠着状態となった両軍に向けるように、ゆっくりと頭部を覆っていた
そこから姿を現したのは、肩の先へと続く金髪を流水のように揺らめかし、宝石と
ミストリアは一度顔を上げ、天空に浮かぶ恒星を眩しそうに
先の障壁により弾かれた矢は、上空から次々と積み重なることにより、文字通り足の踏み場もないほどに散乱していた。
ミストリアは小さく溜め息を
『
無生物に魔力を込めることで、下僕となる人形を生み出す防性魔法である。その体系区分は多岐に渡り、属性、材質、形状、能力、受令など魔術師の数だけ存在するとも言われている。
一見して水泡を材質としているようだが、本来なら晴天の乾燥地でこれだけ大掛かりな水属性魔法を行使することは不可能である。しかし、ミストリアは地下に向けて魔法を放つことにより、地下水脈から強引に魔法の源たるマイナを掘り起こしていた。
やがて、泡人形はミストリアを中心とした同心円状の列を作ると、前傾姿勢を取るように前腕にあたる部分を地面へと着けた。
それは
次第に、その行動の意図が兵士たちにも伝わってくる。泡人形は地面に落ちた矢を拾い集めているのだ。それは
そして、泡人形は全ての矢を拾い終えると、器用に列に沿って受け渡しながら側方へと積み上げた。
その光景を黙って眺めていた帝国軍であったが、指揮官であるシバイ皇太子のもとに副将らしき老将が駆け寄ると、全軍に合図を送って陣形を変化させた。
先の射撃から構えていた弓を収め、魔術師を後列へと退避させると、前進する騎兵の後ろに歩兵を続かせる。どうやら突撃体制に移行したようだが、遠距離からの攻撃が無効化されてしまう以上、他に打つ手はないのだろう。
しかし、老将の
一方、王国軍もそれに迎合するかのように騎兵を先行させていく。本来、王国の中核たる五大諸侯に上下関係はないが、慣例により指揮を執るのは軍事に秀でたモノノベ家のモリヤ将軍であった。
モリヤ将軍は王国随一の武人であり、勇猛果敢なことで国内外にその名を
どちらからともなく、両軍の兵士は
やがて、騎兵の第一陣が泡人形の目前に迫ると、勢いに任せて馬上から武器を振り降ろす。見るからに脆そうな泡は容易に弾けるかに思われたが、逆にその弾力を以って騎馬ごと兵士を押し返してしまう。
泡人形は
しかし、それらは同心円状に配列されているため、一陣の壁を越えてもすぐにまた次の壁が立ち
しかも、一定時間が経過すると弾けた泡が元に戻り、苦労して空けた穴を埋めてしまうため、多数の兵士を内側に送り込むことが出来ずにいた。
騎兵は速度による機動力こそが最大の武器であったが、今やその脚は完全に封じられ、下乗して戦うことを余儀なくされていた。
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