月面で神楽を踊ってくれないか? という荒唐無稽な展開が起こる本作。どうして月面で田植えをすることになるのかなどディテールが楽しく、驚きもありました。神楽を踊る巫女と神、そうした土着的な世界がSFの宇宙開発分野と奇妙にリンクする不思議さはSFでしか味わえない感動です。
鳥辺野九さんのSF短編は、一年ほど前から好きである。欠かさず読破するほど殊勝なファンではないのだが、思いついたときに読めば、大抵満足を得られる。今回も、作者らしい壮大でミニマムな好編となっている。お薦め。
もともとの2500字版は匿名コンで拝読しておりましたが、こちらの5000字版は物語はそのままに、ディテール部分が大きくパワーアップしたように思います。古きものと新しきもの、命に満ちた地と命なき地、超自然と機械文明、相反すると思われるそれらがシームレスに混じり合う作品世界の妙はさらに印象深く。奇妙な響きのタイトルも読み終わる頃には必然。「すこしふしぎ感」がお好みの方には、きっとお気に召すと思います!