ぼくのいたずら

カミトスミ

誰にもバレない

ぼくのいたずらは誰にもバレない。

お父さんにも。お母さんにも。お兄ちゃんにも。妹にもバレたことはない。

なぜかというと、ぼくは、家族のみんなから見えていないからだ。


ぼくのいたずらは誰にもバレない。

ふだんは、誰もいない子ども部屋でお人形遊びをしたり、車やトラックのミニカーで遊んだり、一人で遊ぶことが多いからだ。

でも、たまにお兄ちゃんと妹の三人で遊ぶこともある。

二人には見えていないけれど、楽しい雰囲気になるのが大好きだ。


ぼくのいたずらは誰にもバレない。

だけど、少しは気づいてほしい。そこでぼくはほんの少しだけ気配を出したくて、廊下を勢いよく走ったり転んだり、階段ののぼりおりをして足音を出して遊んでいる。家族のみんなは足音に気がついて「あれ?誰だ?」と不思議に思っている。

この前、お父さんがぼくの足音を追いかけてきたときはもうだめかもしれないと思った。姿を見られることはないとわかっていてもドキドキが止まらなかった。


ぼくのいたずらは誰にもバレない。

ぼくのことを家族は「座敷わらし」だと言っている。気配はするけれども見えないからだ。

そして、ちょっとしたいたずらにも気づいているみたい。つまり、家族はぼくの存在をわかっているということ。それは本当に、本当に、嬉しくて、嬉しくて、たまらなかった。

家族のみんなは「座敷わらし」のぼくを受け入れて暮らしているのだ。そして、たまに声をかけてきてくれる。見えていないから全然違う方向に声をかけているけれども、こころがあたたまる気がする。ぼくはこの家族が大好きだ。


これからも、家族のみんなを見守りながら、この家で暮らしていこうと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぼくのいたずら カミトスミ @kkir

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ