第10話 魔族との戦い その2

「さて、第2ラウンドといこうじゃないか」


 魔族の男は俺を見下しながら、不敵な笑みを浮かべる。


(ちょっと血を流しすぎたかもしれんな)


俺は、自分のお腹から流れる大量の血を見ながらそう思う。


(だが、痛いとか言ってる場合ではない!俺はここで負けるわけにはいかねぇからな!)


自分に喝を入れ直す。


「〈イビルフレイム〉」


男が再度、黒い炎を飛ばす。


「レスティ真明流外伝、初の型〈織〉」


俺は五感を研ぎ澄ませることにより、自分を中心とした半径数メートル内の情報を全て正確に得る。


(長時間使うことはできないけど、どうせ、俺の体が長い時間戦えない。なら、出し惜しみしてる場合じゃないな)


そう思い、俺は〈織〉を展開する。


五感を研ぎ澄ませることにより、難なく躱す。


そして…


「レスティ真明流、二の型〈飛雷〉」


俺は雷を纏った斬撃を飛ばす。


しかし…


「この距離なら躱せるわ」


俺の斬撃を難なく躱す。


そして、俺のところに向かって突っ込んでくる。


「っ!」


突然のことに反応が遅れる。


俺を殴ろうとしてくる男の拳を『真実を貫ぬく聖剣ヴォーパルソード』で防ぐ。


「ぐっ!」


(何というパワーだ!)


「こんなもんではないぞ」


男がそう呟くと、右腕と脚を使ったラッシュが炸裂する。


〈織〉によって防ぐことはできているが、攻撃間のインターバルが短く、反撃に移ることができない。


「おらおら!勇者ってのも大したことねぇな!」


「くっ!」


(一撃一撃が重い!それに、お腹の傷が結構響いてるな!)


俺は思うように動くことができず、防戦一方となる。


そこに…


「〈ヘルブラスト〉」


男の口から暗黒のレーザー攻撃が飛んでくる。


「っ!」


至近距離からの攻撃に、息をする間も無く全力で回避するが…


「かはっ!」


口からの攻撃を全力で回避したため、お腹に男の拳がヒットし、吹き飛ばされる。


意識が飛びそうになるところを堪えて、俺は受身を取りつつ、地面を転がる。


建物にぶつかり、俺は急いで起き上がる。


「ふははは!どうした!そんなもんか!」


(これは肋骨が何本か折れたな。幸い、肺に刺さったりとかはしてないようだ)


俺は自分の状態を確認する。


(ふぅ、これは本気を出すしかなさそうだな。正直、この状態になると、激痛で動けなくなるからやりたくはなかったんだが、仕方ない)


俺は腹を括り、全身に雷を纏う。


「レスティ真明流外伝、二の型〈雷閃〉」


と、呟く。


この技は一言で言えば『動きが速くなる』だけだが、それに耐える体や脳が必要となり、長時間使用し続けると、体全身が悲鳴を上げて、しばらく激痛によって動けなくなる。


普段はレスティ真明流の技を使用する時だけ全身に雷を纏うが、この状態は常に纏い続ける。


「さて、行くか」


俺は〈織〉を展開しつつ、男に攻撃を仕掛ける。


「!?」


俺の動きの変化に気づいた男は驚き、防御しようとするが…


「遅い」


俺は男の全身を切り刻む。


「ぐぁぁぁ!!!」


そして…


「終わりだ。レスティ真明流、三の型〈落雷〉」


俺は剣に雷を纏い、上から振り下ろす。


まるで雷が落ちたかのような威力があり、男は右腕でガードするも、防ぐことができず、右半身を斬られる。


切られたところから鮮血が飛び散る。


崩れ落ちる男に俺は剣を構えたまま…


「さぁ、吐け。魔王は本当に復活するのか?」


俺は男に聞く。


「お前らに情報を与えたくないが、これだけは伝えておく。もうすぐだ、もうすぐで魔王様が復活する!」


男はそこまで言うと、突然体が爆発する。


「まだ聞きたいことがあったが……あ、やべぇ、終わったと思ったら体が……」


俺はその場で倒れ、意識を失った。




「フィアナ!それはやりすぎよ!」


「そんなことありません!お姉ちゃんが聖女として癒してるだけです!」


「そ、そんな破廉恥な癒し方、今までしたことないでしょ!?」


「実はこの体勢の方が効果ありなんです!」


「初めて聞いたんだけど!」


(なんか俺の耳元がうるさいな。しかも、両腕に誰かがいるような……)


そう思って俺は目を開けると、フィアナとルナが俺の腕に抱きついていた。


「うぉっ!」


「あ、シオンくん、ようやく目覚めたのですね!お姉ちゃんは心配しましたよ!」


「シオン、良かった……って!こ、これはフィアナを止めるために抱きついてるだけで、べ、別にアタシがシオンに抱きつきたいわけじゃないんだからねっ!」


フィアナたちの言葉を聞いても、俺は状況が理解できず…


「2人はなんで俺が寝てるベッドに潜り込んで抱きついて……はっ!も、もしかして、俺に襲ってほしいとか!?」


「ふふっ、そうですね」


「なっ!ち、違うわよ!」


(どっちなんだよ……)


「まぁ、冗談は置いといて、フィアナは治療ありがと。それに、ルナにも心配させてしまったな」


「いえいえ!聖女としての役目なので!」


「ふんっ!」


俺の感謝にフィアナは笑顔で、ルナはそっぽを向きながら返事をしてくれた。


その様子を見ながら…


(ははっ、勇者パーティーの時も、俺が倒れたらこんな感じだったな。抱きつかれたりはしてないが…)


そんなことを思った。

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魔王を倒した勇者(童貞)は美少女ハーレムを築いて隠居するが、勇者に隠居という選択肢はないらしい。 昼寝部 @hirunebu

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