第9話 魔族との戦い その1
〜???視点〜
薄暗い部屋に1人の男が空白の王座に跪いていた。
いや、空白の王座に見えたその座面には、握りこぶしくらいの大きさの結晶があった。
すると、その結晶から声が聞こえてくる。
『ネフケスよ。負のエネルギー集めは順調か?』
「はっ!今のところ順調です」
『そうか。他の者も順調と聞く。人間の負の感情を大量に集めることができれば、俺は魔王としてもう一度復活することができる。心してかかれ』
「仰せのままに」
ネフケスはそう返事をして、部屋を出る。
そして…
「前回は勇者シオンによって邪魔されてしまいましたが、明日、明後日には勇者が王都から離れた村に誘い出されるはずです。勇者不在の間に全てを終わらせましょう」
そう呟きながら、薄気味悪い笑みを浮かべるネフケスであった。
〜シオン視点〜
俺たち、勇者パーティーは急遽、国王に呼び出される。
「お前たちを集めたのは他でもない。昨日、一昨日と2日続けて、この国の中心である王都から、かなり離れた場所にある二つの村が襲撃された」
「なっ!」
俺たち4人は驚く。
「死傷者も少なからず出ているが、村の人が全員殺されるという最悪の事態は免れているようだ」
俺たちはその言葉を聞いて安堵する。
「しかし、無事だった者の大半は恐怖や混乱状態となっており、会話がまともに出来ないほどとなっている。それだけの恐怖を与えられたようだ」
(そこまでの状態になるとは…。かなりヒドイ経験をしたんだろう)
「よって、お前たちには原因究明に当たってほしい。もしかしたら、この件に魔族が関わっている可能性がある。細心の注意を払って、任務にあたれ」
俺たちは国王の言葉に頷き、さっそく、作戦会議を行う。
「詳しく聞くと、王都から北側にある村が二つ襲撃されているようです」
「そういえば、魔族のネフケスが現れたラタ村も北側だったな」
俺たちはその後も作戦会議を行い…
「今、北側には沢山の村がありますが、襲われた村はどれも大勢の人たちが住んでる村らしいです。そのため、次に襲われる可能性のある村は『トウト村』と『ガンツ村』だと思われます」
「じゃあ、今から俺がダッシュでその二つの村を確認してくる。今から行けば夜にはつけると思う」
「そうね、私たちはシオンよりはやく移動できないから、シオンだけ先に行ってもらうのが得策ね。私とフィアナも後から向かうわ」
「すまんが俺はついていけそうにない。だから、王都の防衛を担当させてもらう」
「はい、お願いします。レオルドさん」
俺たちは作戦会議を終え、俺はまず、『トウト村』を目指した。
トウト村へ目指している道中…
「くそぉぉぉぉ!!!!全然隠居できねぇじゃねぇかぁぁぁ!!!元凶の奴、許さねぇぞぉぉぉ!!!」
不満をひたすら叫んでいた。
もうすぐでトウト村に到着する時…
「ん?なんかやけに明るいな」
周囲は真っ暗になりかけているのに、前方の方は明るいことに気がつく。
「まさか!」
最悪の可能性が俺の中で導き出され、さらにスピードを上げる。
そこには、家が所々焼けており…
「た、助けてくれー!」
「ママー!パパー!うぅ……うぇぇぇぇん!!」
叫び声が至る所から聞こえてきた。
「くそっ!一足遅かった!」
俺は原因を探ると…
「はやく逃げないと、死んでしまうぞ?」
そんなことを言いながら呑気に歩いている肌の色が褐色の男がいた。
「魔族か!」
(やっぱり、この件に魔族が関わっていたか!)
俺は魔族の殺戮を止めるため『
「お!やっと来たか!勇者!」
「なんだ?俺を待ってたのか?」
「正確には村を襲うついでにお前を待っていた。ネフケスの野郎が、ここで暴れれば勇者がやって来るって言ってたからな。奴は勇者の強さにビビって逃げたらしいから、俺が勇者を殺せば、いけすかねぇネフケスよりも俺の方が上ってことを証明できるぜ!」
どうやらネフケスとは知り合いらしい。
「俺も魔族には用事があったんだ。大人しく捕まってくれないか?」
「あ?そんなこと聞き入れるわけねぇだろ!」
魔族の男は拳を握って俺に突っ込んでくる。
俺は後ろにジャンプすることで回避する。
すると、俺がいた場所には、男が殴ったことにより、大きなクレーターができていた。
(おいおい!どんだけ馬鹿力なんだよ!)
俺はそのことに驚きつつ…
「来たれ!光の加護よ!〈ホーリージャベリン〉!」
俺は光魔法による槍を展開して男に攻撃する。
しかし…
「ふっ!」
男は光の槍を殴って撃ち落とす。
(んなアホな!)
「おいおい、勇者の魔法はこんなものか?」
男は俺を挑発してくる。
「1個迎撃できたくらいで調子に乗るなよ?」
俺は『
「レスティ真明流、初の型〈紫電〉」
雷を全身に纏い、光魔法による光速の突きを繰り出す。
「うぉ!」
男は驚きつつ、俺の攻撃を紙一重で躱す。
躱されることを想定していたため、俺は冷静に…
「〈転回〉」
ぶつかりそうになった建物の壁に両脚を着地させ、そのまま、もう一度折り返す形で〈紫電〉を繰り出す。
「っ!」
これに反応できなかった男は左腕を切り落とされる。
(よし、まずは左手)
俺が次の攻撃を仕掛けようとすると…
「ふははは!」
男がいきなり笑い出す。
「何がおかしい」
「いやいや!想像以上に強いな。左手を失った状態で今のお前に勝てそうにない」
「じゃあ、諦めて投降してくれ」
「残念だが、それは無理だ。なぜなら、お前は死ぬのだから」
「何を言って……」
と、俺が困惑していると、男は明後日の方向に…
「〈イビルフレイム〉」
暗黒の炎を右手から飛ばす。
そこには…
「うぇーん!パパー!ママー!どこー!?」
一人の女の子がいた。
(まずいっ!間に合え!)
俺は女の子を守るため、光速移動で瞬時に女の子のところへ行き、左手で女の子を抱えて、魔族の攻撃を防ごうとするが、間に合わずに…
「かはっ!」
俺は背中から魔族の攻撃を喰らって吹き飛ばされる。
なんとか女の子が怪我をしないように庇いながら受け身を取ることはできたが、全身に痛みを伴う。
すぐに体勢を整えて追撃を警戒するが、追撃はないため、女の子に離れてもらうよう声をかける。
「怪我はないかい?」
「ぐすん……う、うん、私は大丈夫だけど、お兄ちゃんが……」
女の子は涙を流しながら言う。
「俺は大丈夫だよ!これくらいの傷は大したことないから!」
俺は少しでも安心してもらうために体を動かす。
「よ、よかったぁ」
「じゃあ、ここは危ないから早く逃げるんだよ?」
「うん!お兄ちゃんありがと!」
そう言って、俺たちから離れていく。
それを見届けてから、悪魔の方を向く。
(思った以上にダメージを喰らってしまった)
なんとか手足全てを動かすことはできているが、長時間の戦いは難しい。
「さて、第2ラウンドといこうじゃないか」
魔族の男は俺を見下しながら、不敵な笑みを浮かべていた。
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