後編
廊下でクリーム色で塗られた冷たいコンクリートの壁にもたれ掛かり
宇津木詩織は組んだ腕の人差し指をトントンと叩きながらイラついている。
不幸は突然訪れる。
それは何もない日常を過ごしていても。
誰も避けることは出来ない。
善人にも悪人にも。
金持ちにも貧乏人にも。
健康な人にも病気の人にも。
若い人にも年寄りにも。
男性にも女性にも。
万人誰しも選ぶこと無く平等に不幸は訪れる。
冠字屋伊集久は廊下で息を一息吸い話し始める。
「オレ、
何よ、慌てちゃって
「でな、オレ、久遠姉に告白、いや、クリスマスのイベント、子供会のやつが終わったら告白しようと思って、クリスマスプレゼント、久遠姉の買ったんだ」
ワタシには無いの
「それで、オレ……、あのな、オレ、迷惑? じゃ無いかな、久遠姉に迷惑かけたくねーし、でもオレ言いたい、オレ伝えたいんだ!」
やだやだやだやだ
「なあ、宇津木……、オレに告白されたらどう思う?」
ワタシに聞かないでよ!
宇津木詩織は廊下でため息を一息つき話し始める。
「アンタが誰に告白しようと知った事じゃないわ、でもその先輩って確か凄い美人でスタイル良くて頭良くて元生徒会長で人気者なんでしょ? アンタの告白が成功するとは思えないけど……」
これで止まる?
「でもオレ告白するんだ……ずっと言えないままのオレは嫌なんだ」
もう決めてんじゃん……
「あーあー、そーかそーか、派手に告白して派手にフラれて来れば良いわ、ちゃんとフラれたらワタシに言いなさい、可愛そうだから少しくらいならワタシが付き合ったげるから」
フラれろバカ!!
「宇津木……、お前……」
なによ
「優しいんだな」
優しく無いんだよ! 打算だよ!!
「ありがとう宇津木、相談乗ってくれて」
冠字屋伊集久はまだ告白前だというのに少し涙ぐんでいた、彼の決心はもう揺るがないのだろう。
***
「三森先輩も泣くのかな?」
自分のようだけさっさと済ませ帰って行った冠字屋伊集久のいない冷たい廊下で、宇津木詩織はうずくまり泣いた。
「クリスマスはデッカイケーキ、ホールで買って来て一人で食べてやる!!」
クリスマスに幸せを。
クリスマスに告白を 山岡咲美 @sakumi
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