第56回配信 (紫音目線) 逆凸を研究
「だから、本番はこういう風に進んでいくと思うんだよね!」
龍ちゃんが張り切って解説しているけど、正直聞いていなくない。
レミーとコラボするのは全然いい。
レミーは、わたしのことを馬鹿にしないし、わたしのペースで進んでくれる。
しかも、わたしたちのことを好きなことが伝わってくるから、別にいい。
問題は、わたしたちに勉強しろ、と様々なVtuber動画を見せてくる龍ちゃん。
別に、他のVtuberを見るのは構わないよ?
勉強になるし、最近は私だって他の人の見てるから。
私だって学んでる。
他人のものも吸収しながら、成長できるようにしていきたいもん。
でもさ、そこに龍ちゃんがいるのは違うよね?
だってさ、龍ちゃんが解説してるってことは、その人の配信見てるってことだよね?
しかも、わたしたちに解説するぐらいってことは、何回も見てるよね?
ねぇ、見てるよね?
私は、そんな黒い思いが出て来て、思わず頭を振る。
はぁ、落ち着いて。冷静になって。
こんなのじゃ、龍ちゃんに嫌われてしまう。
そんなの、耐えられない。
前回のことがあってから、わたしたちは再確認したのだ。龍ちゃんがいる生活がいつまでも続くものじゃないということを。
この間は、龍ちゃんが私達のことを思ってのことだったが、それだけが離れる理由ではない。
もし、龍ちゃんが大学を卒業したら?
もし、彼女とかできて同棲を始めてしまったら?もし、私達のことを嫌いになってしまったら?
考えるだけで、吐き気がする。
龍ちゃんが出て行ってしまったら、家からまともに出れないわたしたちは、どうすることもできなくなってしまう。
ただただ、泣いて過ごすしかないのだ。
いや、過ごせるのかどうか。
龍ちゃんがいなくなってしまっては、私達は何もできなくなる。
それを、私達は再確認したのだ。
だから、できる限り龍ちゃんにはここが居心地の良い場所であってほしい。
そりゃ、携帯見たりとか、GPSつけたりとかは仕方ないけどさ。
ずっと家にいて欲しいのに、それを我慢してるんだから、それぐらいいいよね?
本当なら、わたし達のことだけ考えていてほしいから、コラボなんてしたくない。
わたしたち以外のことなんて1ミリも入れたくない。
でも、わたしたちが元気にしていると、龍ちゃんも元気になる。
だから、わたしたちはコラボをする。
龍ちゃんのために。
「逆凸ってこういうものなんだねー」
と、何事もないように私はお兄ちゃんに話しかける。
本当は、嫉妬で気がへんになりそうだけど、そこは龍ちゃんへの愛で抑える。
それに、コラボはレミーとだから。
頑張れる。
だが、楽観的に考えていた私に飛び込んできた逆凸という名のコラボは、私の想像をかなり超えていた。
突然電話がかかってきて、急に話をする。
しかも、10分から15分で終わり。
そんなの、無理!!
自分の配信でも時間配分できていないのに、他人の配信でうまくそんなことができるわけがない。
しかも、いつ電話がかかってくるのかも分からず、できる限り仲良い感じの話をノリよく?
無理、
絶対に無理。
どうしたらいいの?これ、今からでも断れる?
幼馴染の兄妹VtuberはガチのヤンデレVtuber〜僕らの配信だけみててね〜 ナガレカワ @naga_rekawa
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