第9話 ドラゴン牧場

そんなこんなでやって来ました、ドラゴン牧場。

「こんにちはー、すいません、ドラゴン見に来ました!できればうちの子に飼ってあげたいんで……」

と明るく農夫っぽい身なりの男に声をかける。


「はっはっは、それは嬉しい。どうぞ、どうぞ。ご案内いたしますよ」


狡猾な賢者アルフの水晶玉による検索能力を駆使し、ドラゴンの牧場があるということを知った私たちなのです。


広がる草原、美しい山脈……。

そして、草を食む、ドラゴンたち。

なんて牧歌的な風景なんだろ。


「来てよかった……」

「これがドラゴンさん……」

エリルも目を輝かせている。

小声で確認する。

「あの、これが世界最強のドラゴンなの?」

「あ、ああ、おかしいな?ここに居るはずなんだが……。草食動物なのか……」


農場の方がドラゴンを一匹目の前に連れてきてくれた。

「ほら、挨拶して?」

「コンニチワ」

ドラゴンが片言をしゃべり、ぺこりとお辞儀する。馬車ぐらいの大きさだ。

「ドラゴンって意外に小さいんですね……」

「はい、まあ、飼育用のドラゴンですから……」

「エリル、このドラゴンにする!挨拶してくれたし、間違いなく世界最強だよ!」


ふふ、ちょっと子供だましだったけど、喜んでもらえたかな?

「ええと、あれ?このドラゴン、値札ついてないな?おかしいんだけど??」

と係の人が焦りはじめている。


「どうしたんですか?」

「いや、飼っているドラゴンにはみんな魔法のタグがついているはずなんですけど……」

その時、


「大変だ……、フェンリルの群れがコッチにくるぞ……。ドラゴンを早く小屋へ!」

「え?ドラゴンってフェンリルより弱いの?」

「はい、草食ですから……」


「ふーん……、なんか、かっこ悪くない?」

……エリルちゃん、不機嫌そう。


そうこうしていると、ドラゴンが一目散に小屋に向かって走って行く……。

「まさかと思うけど……、このドラゴン、飛べないんじゃ……」

……エリルちゃん!鋭い!


ドラゴンたちが猛スピードで小屋に入っていったが、目の前のドラゴンだけは動じる様子がなかった。


「あ、でも。キミは勇気あるんだね……」

とエリルちゃんは目の前のドラゴンを誉めた。

気付くと農園のひとたちも居なくなっていた。


あたりには見渡す草原と……、私たちを囲むフェンリル、つまりオオカミのような魔物の群れ。


「おい、まずいんじゃないのか?コレ……」

と狡猾な賢者アルフ。


「ははは、コレ……。勝てる相手じゃないかも……ね?」

はー、ニート人生だけじゃなくて、本当に人生終わった?かな?

終わりとはあっけないものなのか……。

そう思ったとき……。


目の前のドラゴンの様子が変わった……。













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ヤリモク聖女と女神どんの込み入った事情 広田こお @hirota_koo

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